そして何と言っても、私はこのドラマで初めて西島秀俊という俳優を知りました。現在からは想像できないぐらい線も細く、結婚式場から花嫁(富田靖子)を奪い取った勢いで結婚し、篠&古谷夫婦と2世帯住宅で新婚生活を始める二流大学生の息子役で、ぶっきらぼうながらもコンプレックスが強く一本気な若者の雰囲気が、非バブル的世の中に突入していく世界観に見事にハマっています。思えば90年代の西島秀俊は、いつもどこかブスッとしていて、まったくキラキラしていませんでした。しかし、たまに笑った時の顔がとにかく愛らしく、無防備な若さと気高さに溢れ、今改めて観てもまさに理想の男子像そのものなのです。
「私は『木曜日の食卓』の西島秀俊を知っている!」
2010年代に入り、そのストイックな筋肉美で大ブレークを果たした彼を見るにつけ、私は心の中で何度となくそう叫び、折り合いを付けてきました。青田買いを主張したがるアイドルファンみたいで気持ちが悪いですが、おそらく今後も再注目される機会はないであろうこのドラマを今も昔も観続けていることは、私の『西島秀俊観』における密やかなプライドです。そして、まりやさんの『家に帰ろう』も然り。あの曲が次から次へと様々なCMに使用されるたびに「違う! これは『木曜日の食卓』の曲だから!」と、これに関しては実際に声に出して異を唱えることにしています。
※週刊朝日 2018年11月23日号