2000年、小室、及川、四角の3人が“まるで六文銭のように”として再始動して『はじまりはじまる』(07年)を発表。09年には小室の娘のこむろゆいを加えて“六文銭’09”とユニット名を改め、アルバム『おとのば』を発表。結成から50周年を迎えてユニット名を“六文銭”に戻し、本作を発表するに至った。

 CDの帯には“2018年プロテストソング集”との記載もある。それこそが本作のテーマ、コンセプトだが、小室が谷川俊太郎と組んで78年に発表した『プロテストソング』(87年)、昨年に発表した『プロテストソング2』の存在を無視できない。

 もっとも、小室によれば、本作は谷川との共作アルバムとは“逸にするもの”であり“「六文銭」流の切り口で異議申し立てをする、「六文銭」流のプロテストソング”とコメントし、さらには“60年代、社会に抗議の意思表示を示した若者たちの気持ちを胸に秘めて”とも語っている。

“プロテストソング”といえば、政治や社会への批判などを込めたメッセージ・ソングの総称だ。60年代後半に関西で盛んだったアングラ・フォークの大半を占めていたのはそうした曲だったが、小室自身、高石友也、岡林信康、五つの赤い風船などに興味を抱きながら、アングラ・フォークのありようについては、かつて自身が手がけ、得意げに歌っていたという“上から目線”への反省もあって、いささか懐疑的だったという。

 小室が意図したのは谷川との共作による2作の『プロテストソング』と同様に、“ぼくたち流のプロテストソング”であり、こぶしを振り上げ、声高に直接的な表現や名指しで批判し、非難し、糾弾する類のものではない。

 市井で日常を送る人々が報道で知った社会の出来事にふと抱える疑問、切実な問題を抱えながら、口にすることなく、心にしまい込んだままの怒りや悲しみといった思い、人としてのあり様や生き方について、聴く者に問いかけた歌の数々だ。

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