ちょっと買い物に行こうとしても店がない。ガソリンスタンドも近くになく、タクシーを呼ぼうとしても来ない。こんなことが、全国各地で起こっています。背景にあるのが、地域を支えてきた中小企業の消滅。毎年4万社近くも休廃業・倒産していて、生活や経済の基盤を揺るがしています。
「不便になりますから、当然、残ってほしい。でも、経営に口を挟むのは難しい面もあります」
京都府の日本海側に突き出た丹後半島。その北部に位置する京丹後市丹後町宇川地区の住民は、こうため息を漏らす。
地区で唯一、生鮮食料品を販売するスーパー「にしがき宇川店」が、12月末をめどに閉店すると報じられたためだ。生鮮食料品を扱う別の店舗までは車で20分前後かかる。住民には高齢者も多く死活問題だ。
同店を運営する「にしがき」(京丹後市)は閉店が最終決定したわけではないとしつつ、「過疎化が進むことを考えると、そういう(閉店の)方向で検討する必要もあると考えてはいます」(広報担当者)。
住民は会社側に存続を申し入れ、市にも支援を求めるが、店が維持できるかどうか決まっていない。
「にしがき」は複数の店舗があり中小企業より規模は大きいが、地域の小売店を主に担っているのは中小企業だ。大手スーパーやコンビニエンスストア、ネット通販などに押され、経営は年々厳しくなっている。赤字店舗を維持する体力はなく、閉店が相次いでいる。
そうなると車が運転できない高齢者らは、一気に「買い物弱者(買い物難民)」になってしまう。
地方の過疎地だけの問題ではない。
「65歳以上の4人に1人が、すでに買い物難民になっている」
こんな衝撃的な推計を農林水産省が6月に発表した。最寄りの小売店まで直線距離で500メートル以上あり自動車を利用できない65歳以上の人は、2015年時点で全国に825万人。05年に比べ約2割増えている。
注目すべきは東京や大阪などの都市圏で急増していることだ。東京圏は198万人で05年に比べ約6割増。大阪圏は118万人で約4割増となっている。都市部でも、小規模な店は確実に減っている。