だが、こうしたライドシェアサービスがあるところはまだ限られている。交通手段がなく、自宅にこもりがちな高齢者が全国各地で増えているのだ。
タクシー会社を責めることもできない。中小企業は余裕がなく、高騰する燃料費や車両費をまかなうのは大変だ。運転手も集まりにくくなっている。利用者の少ない地域では営業を続けられず、撤退するところが目立っている。
暮らしや経済を支えてきた中小企業は、どうなってしまったのか。
東京商工リサーチによると、17年に休廃業・解散した企業は2万8142社。大企業はほとんどなく、ほぼ全てが中小企業だ。この10年間、2万5千社前後で高止まりしている。倒産と合わせると、毎年、4万社近くが消えている。
東京商工リサーチの友田信男・情報本部長は、こう指摘する。
「1960年代から80年代にかけて起業した創業者が、高齢になっている。子どもに事業を引き継ぐことができず、黒字でもやめてしまう企業は少なくない。事業の承継に早めに向き合ってこなかったツケが、跳ね返ってきています」
経営者が高齢化すると事業もうまくいかなくなる傾向がある。東京商工リサーチが年代別に経営状況を調べたところ、経営者が高齢なほど増収企業の割合が少なく、赤字企業の割合が多かった。
後継者が見つからず、事業も先細りしていくなら、見切りをつけるしかない。17年に休廃業・解散した企業の代表者の年齢は60代以上が83.4%。高齢の経営者が追い込まれているのだ。
中小企業が消える現象は、今に始まったことではない。バブル経済が崩壊してからの「失われた30年」を通じて、しわ寄せは弱い事業者にいった。
中小企業庁によれば、従業員数が製造業で20人以下、卸・小売りやサービス業で5人以下の小規模事業所数は、ピークだった89年の約509万社から、14年に約401万社まで減った。
「現在、直近の2016年経済センサス活動調査を集計しています。小規模事業所数は、さらに20万社程度減りそうです」(同庁担当者)
休廃業・解散が深刻なのは、小売業やサービス業など消費者向けに事業を展開する企業だ。東京商工リサーチが主な産業別に分析したところ、17年の休廃業・解散で最も多かったのは、飲食業や宿泊業などの「サービス業他」7609件。「建設業」7072件、「小売業」4024件が続く。
※週刊朝日 2018年11月9日号より抜粋