運動といっても激しく体を動かす必要はなく、ウォーキングで十分という。
健康増進の目標を定めた「健康日本21(第二次)」によると、日常生活での歩数の目標は65歳以上の男性が1日7千歩、女性が6千歩。駅などではエスカレーターをなるべく使わず、階段を上り下りしたい。
運動習慣がつくと、骨をつくる「骨芽細胞」が目覚める。室内でも手軽にできる運動として、「つま先立ち&かかと落とし」などがある。空いた時間に簡単な運動を繰り返せば、転んでも折れにくい骨をつくれる。
自治体の「体操教室」に参加するのもよい。最近は転倒骨折予防に特化した内容で展開するところもある。
高齢者が健康寿命を延ばせるように、東京都文京区は「転倒骨折予防教室」を開いている。65歳以上で要介護認定を受けていない人が対象。月2回と月4回、1年間続けるコースがある。
9月下旬の平日午後、区内での教室を訪ねた。30人ほどの男女が椅子に腰をかけて1時間半ゆっくりと体を動かしていた。
参加者の88歳男性は、糖尿病の持病を抱えながらも杖なしで歩ける。昨年4月に室内で転んで左足首にヒビが入ったが、退院後にリハビリを懸命に続けた。寝たきりになりたくない一心からだった。
「3カ月前から、バスで30分ほどかけて教室に通っています。体操を始めてから、椅子につかまりながら片足立ちできるようになった。介護保険のサービスはまだ使ったことはないよ」
目を細め、そう笑った。
83歳女性は最近、背中の丸まりが気になってきた。半年ほど教室に通い続けているという。
「家の中でふすまの縁などにつまずくことがあります。でも、運動しているからなのか、転ばなくなりましたね。姿勢が悪くなってきたので、背筋を伸ばすように気をつけています。午前中はエアロビクスに行ってきたばかりなの(笑)」
女性も杖を持っておらず、教室を終えるとさっそうと部屋を出ていった。
スクワットと片足立ちを続ければ、下肢の筋肉を鍛えてバランスよくできる。日本整形外科学会はこうした運動を特に推奨しており、文京区の教室でもとり入れられていた。片足立ちを左右1分間ずつ1日3回続けると、転倒が3分の2に減ったとの報告もある。いつまでも元気に動ける骨を保ち、健康寿命を延ばしたい。(村田くみ)
※週刊朝日 2018年11月9日号より抜粋