これには女性有権者たちも激しく反発した。人事案が採決された10月6日、首都ワシントンから西海岸のオークランドまで全米各地で、多くの女性を含む大規模な抗議デモが行われた。これを組織した女性団体「ウルトラ・バイオレット・アクション」の代表は、「この問題は今日で終わりではない。中間選挙の後にわかるでしょう」との声明を発表した。
これに対し、共和党は「カバノー氏の問題を争点化し、承認を遅らせ、妨害しようとした」と、民主党を激しく非難。すると、多くの支持者がこれに同調し、共和党内の結束が強まったという。
結局、この問題は両党の支持者を活気づけたようだが、どちら側に有利に作用するかといえば民主党ではないかというのが大方の見方だ。それは世論調査にも表れている。選挙分析に定評がある政治情報サイト「ファイブサーティエイト」の10月13日の調査では、中間選挙で民主党が下院(定数435)の過半数を奪う確率は78.5%で、その1週間前の73.6%よりも上昇した。上院(定数100)は共和党が多数派を維持する確率が81.2%となったが、上院で共和党が優勢なのは改選数が8議席と、民主党の26議席より圧倒的に少ないからである。
また、翌14日に発表されたABCニュース=ワシントン・ポスト調査でも、下院選で民主党候補を支持するとの回答は53%で、共和党支持の42%を上回った。とくに注目すべきは民主党候補を支持する女性有権者が全体の59%で、共和党支持の37%を大きく上回っていることだ。投票傾向の男女差としてはこれまでの中間選挙で最大だという。もし民主党が下院で多数派を奪還すれば、トランプ大統領に対する議会の追及は一気に激しさを増すだろう。理由は多数派の党の所属議員が各委員会の委員長を務め、調査権を持ち、審議の主導権を握るようになるからだ。
現在、下院司法委員会の民主党筆頭理事であるジェロルド・ナドラー議員はカバノー氏の性的暴行疑惑についても、「(共和党主導の)上院司法委員会は十分な調査をしなかった。民主党が過半数を取れば改めて調査を行う」と明言している。そこで新証拠が出れば、トランプ大統領や共和党の責任も問われることになろう。