

レニー・クラヴィッツのニュー・アルバム『レイズ・ヴァイブレーション』に打ちのめされた。パワフルでダイナミック。直球勝負のファンク・ロック、ソウルフルなロックンロール、甘いラヴ・ソングを堪能させてくれる傑作だ。
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レニー・クラヴィッツ(レナード・アルバート・クラヴィッツ)は1989年、サイケ調の『レット・ラヴ・ルール』でアルバム・デビュー。“プリンス・ミーツ・ジョン・レノン”と称された。2作目の『ママ・セッド』(91年)に収録された「イット・エイント・オーヴァー・ティル・イッツ・オーヴァー」が全米2位に。日本では、3作目『自由への疾走』(93年)の表題曲がテレビのワイドショーやCMに起用され、人気を確立した。
「フライ・アウェイ」(98年)以来、4年連続でグラミー賞に輝き、これまでに世界で4千万枚のアルバムを売り上げてきた。
そんなレニーが実は、前作『ストラット』(2014年)のツアー後、全く曲が書けないというスランプに陥った。ソング・ライターとの共作を勧められたが、自身の中から自然に生まれてくる音楽を作りたいとして拒み、バハマの自宅で考え込む日々を送っていたという。
ところがある日、午前4時ごろに目が覚めた。頭の中で何やら鳴り響いている。即座にスタジオに向かい、頭で鳴っている曲のラフ・スケッチを録音。この神がかり的な体験以来、音楽が洪水のように押し寄せ、アルバムの完成形すら夢に出てきたという。
スランプ脱出のきっかけとなったのが、新作の2曲目で、シングルとなった「ロウ」だ。
レニーはマルチ奏者で、プリンス同様、自分でドラムを録音し、ギター、ベースなど他の楽器を重ねていくという。「ロウ」のMVでは、それを物語るようにドラムをたたきながら歌うレニーの姿が見られる。
この曲は、マイケル・ジャクソンの「ビリー・ジーン」や「ロック・ウィズ・ユー」を思い起こさせる。ホーンやストリングスのアレンジは、レニー自身も認めているように、マイケルの作品をプロデュースしたクインシー・ジョーンズを意識している。