表題曲の「レイズ・ヴァイブレーション」は、レニーのワイルドなシャウトと鮮烈なエレキのユニゾンで矢継ぎ早にメッセージを訴えかけ、パワフルなブギ・ロック的展開に。激しいドラムスをフィーチャーした演奏はまさに白眉、聴きものだ。キング牧師、ガンジーの名を挙げ、暴力以外の方法で紛争を止めることを訴えかけている。
「ジョニー・キャッシュ」では、一転して生ギターをフィーチャーしたバラード的展開に。レニーが“サイケデリック・ファンク・カントリー”と語るこの曲は、闘病中だった母の訃報を知った際、その場に居合わせ、慰めてくれたジョニー・キャッシュ、ジューン・カーター夫妻との逸話をもとに書いたという。丹念な歌唱が印象的で、本作でのハイライトのひとつだ。
続く「ヒア・トゥ・ラヴ」も、ピアノをバックにしたバラード。ストリングスや聖歌隊のコーラスも用い、“憎しみ”や“差別”をなくすよう歌いかける。
ポップで軽快な「ファイブ・モア・デイズ・ティル・サマー」は、工場で働きづめだった男が、“あと5日”で人生初のヴァケーションに出かけるというユーモラスな曲。
ファンキーなロック調の「ザ・マジェスティー・オブ・ラヴ」、重厚なコーラスと鮮烈なギター・ソロを聴かせる「ゴールド・ダスト」、ネオ・アコ風のポップな「ライド」とラヴ・ソングが続く。“俺は常に君の心の中にいる”と甘い歌声で語りかける「アイル・オールウェイズ・ビー・インサイド・ユア・ソウル」でアルバムは締めくくられる。
世界に問いかけるメッセージ・ソングの数々は、いかにもレニーらしい。ファンキーなロッカーとしての姿勢を強く打ち出しているのが頼もしく、聴いていてうれしくなる。
近ごろ、肝っ玉の据わったロック・アルバムがないと嘆く人たちにこそ、強くお薦めしたいアルバムだ。(音楽評論家・小倉エージ)