再生医療の臨床応用、創薬、医療機器開発が、事業の三本柱です。世界で初めてのiPS細胞を用いた加齢黄斑変性の臨床研究が目立っていますが、体性幹細胞を用いた血管再生や、PET画像に使う試薬の開発では、かなりの成果が上がっています。老化促進と加齢疾患の関係といった、やや基礎寄りの研究もあります。小規模ながら自前の病院(60床)も持っています。

 近隣には、理化学研究所の多細胞システム形成研究センター(CDB)、スーパーコンピューター「京」を持つ計算科学研究機構(AICS)、分子イメージング科学研究センター(CMIS)があり、アカデミア側の有力な研究機関として、研究協力関係を保っています。iPS細胞を分化させるまでは理研CDBの仕事ですが、理研には病院がないので、臨床研究は、当財団を含め、周辺の医療機関がサポートしています。

――15年4月に日本医療研究開発機構(AMED)が設立されて、変化はありましたか。

 まだあまり変わっていませんが、評価は時期尚早です。また、色々な面でスケールの違うNIH(米国立保健研究所)と比較するのも気の毒なことでしょう。AMEDの設立趣旨は、文部科学省、厚生労働省、経済産業省と、医療に関するプロジェクトがバラバラに動いていたのを、実用化という方向性を見据えて重複を排除することです。

 そして何よりも、長期的な展望に立つことを期待しています。日本の研究助成が非常に弱いのは、5年で区切るケースが多いことです。生命科学で実用化につなげようとするならば、5年は短すぎます。我々のPD-1発見から薬が出るまで22年かかっています。

 最初は、海の物とも山の物ともつかないものから、芽が出てくるわけです。基礎研究に幅広く根気強くサポートして、芽が出てきたら育てるという長期的な戦略できちんと調整してもらいたい。AMED理事長の末松誠先生も、それを目指されるとのことで期待をしています。

――出口が見えるテーマが優先されるとの不満もあるようですが。

 ロケットを打ち上げたり、橋を造るのと違い、生命科学にはギャンブルの側面があり、どれが当たるか分かりません。出口指向だけでやり過ぎるのも良くないでしょう。AMEDに統括される予算と、文科省に残す基礎医学の予算はきちんと分けないといけません。

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画期的ながん免疫療法の新薬