そんな箕輪さんも、上映中に原因不明の事故で、フィルムが2分間分、縦に裂けたときは焦った。
「いまはフィルムがとても高いんですよ。以前は1時間半を20万円くらいでプリントできたけれど、その3~4倍はかかる。わずか2分とはいえ、焦りましたね。裂けた部分をスプライシングテープを使って必死で修復してみたけれど、映写したら画面に縦筋が入ってしまって、結局弁償することになりました。ちなみに、スプライシングテープも製造があらかた終わってしまっているので、なかなか手に入らない。見つけたらすかさずまとめ買いしますが、昔は1本200~300円くらいだったものが8本で5000円とかするんです(苦笑)」
上映が終了すると、すぐにフィルムを巻き戻す。リールを映写機からリワインダー(巻き取り機)に移し、最初は手動で調整しながら巻いていくが、あとは自動。2時間のフィルムなら10分ほどで巻き戻せるという。同時に、次の上映に備えて映写機の清掃や画角の調整を行なうのも忘れない。
フィルムは重い。1作品20kg前後にもなるリールを、映写機にかけたり外したりするだけでも重労働だ。黙々と、ひとつひとつの作業を丁寧に行う姿には、やはり“職人”を感じさせられる。
箕輪さんはいまでも、毎月20本から30本を映画館で見るという。もちろんその大半はデジタルだが、「やはりフィルムで撮られたものは映像の質感が違いますよ」と言う彼に、フィルム上映を未来に継いでいくべきだと思うか、と尋ねると、首を横に振った。
「そんなだいそれたことは考えていませんよ。ただ自分が見たいものを、お裾分けしているだけですから」
そう嘯いた言葉には、映画技師のフィルムへの愛情が、たしかに感じられた。(本誌・伏見美雪)
※週刊朝日 2018年9月28日号
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