そんな机上の単純計算が成り立てば、玉城は前回の翁長得票から6万減、佐喜眞は仲井眞票を13万上回り、30万票対39万票で優位に立つことになる。
もちろん、現実はもっと複雑だが、自公にはほかにも強みがある。この2月、名護市長選で確立した「勝利の方程式」と呼ぶ戦術だ。その手法を知事選にも持ち込もうとしている。本土から数多くの国会議員を入れ替わり投入し、水面下で企業や団体の票固めを徹底する。選挙運動では辺野古問題に一切言及せず、経済振興のみを訴える。
名護市長選でとりわけ衝撃的だったのは、創価学会のドブ板や企業選挙による期日前投票への大掛かりな誘導だ。名護市での期日前投票率は実に有権者の44%。実際の投票者数の6割近くが投票日前日までに票を投じたのだ。
ある民放ニュースは、その組織的動員の様子を撮影した。作業着姿の集団が期日前投票後、一人ひとり名簿に、住所と名前を書き込んでいる。集団行動と署名による事後確認。団体行動で精神的圧をかける“踏み絵”に他ならない。
県選管によれば、今回の知事選でも、初日から3日間の期日前投票はすでに前回の倍のペースで続いている。祭日17日の昼過ぎ、那覇市役所の投票所をのぞくと、まだ集団行動は見かけなかったが、すでに公明党幹部は「名護市長選のような期日前投票を目指す」と選挙演説で公言する。選挙戦終盤に向け、誘導や動員は本格化するはずだ。企業や団体回りでも、竹下亘総務会長ほか県外の自民党国会議員数人が長期的に沖縄に張り付き、各派閥の国会議員秘書が常時60人ほど投入されているという。
自民サイドでは“翁長派保守の引き剥がしも進んでいる”という声も聞く。本当だろうか。那覇市内で年配の翁長支持者に尋ねると、「あり得るでしょうね」とうなずいた。
「玉城さんは県中部の人で、直接は知らない。我々はもともと保守だから、革新の運動員に頼まれても抵抗があるんです。玉城さんが直接、保守の人脈をどれだけ回れるか、その部分も大きいと思います」