自公の中央が総力を挙げて「オール沖縄」に挑む沖縄県知事選。過去4年、翁長支持の保守層には弱体化も目立っている。一方で、最後まで死力を尽くして国と戦った翁長の姿には、幅広い畏敬の念も広がる。終盤戦、「弔い合戦」の雰囲気がどれだけ選挙戦に重なるか。その流れが選挙結果を決める。ノンフィクションライターの三山喬が沖縄県知事選を追う。(敬称略)
* * *
9月17日、地元紙の琉球新報は沖縄テレビなどと行った知事選序盤の情勢調査を報じた。
それによれば、県政与党陣営の前衆議院議員・玉城デニーと自公などが推す前宜野湾市長・佐喜眞淳が「接戦を繰り広げている」という。玉城、佐喜眞と表記する順番が、僅差(きんさ)での玉城リードを意味している。
しかし、自民党県連幹部は「4年前の翁長(雄志)支持層から、今回はこっちに来る票がかなりある」と余裕の表情を見せる。
もともと自民党は、8月に予定されていた辺野古への土砂投入を既成事実とし、反対派にあきらめ感が広がる中、11月の知事選に臨む想定でいた。だが、そのシナリオは翁長の突然の死で崩れ、翁長後継候補の選考も生前の翁長の言葉から一気に決着した。当時の地元紙は「死せる孔明、生ける仲達を走らす」と三国志の故事を引き、亡き翁長の影響力を警戒する自民関係者のコメントを載せた。
だがそれから約3週間、この自民党県連幹部は「心配したほどには、弔い合戦のムードになっていない」と安堵(あんど)感を示す。
佐喜眞陣営の自信は支持政党の“陣構え”にも依拠している。4年前の翁長は、36万票対26万票と、約10万票の差をつけて現職の仲井眞弘多を破った。
このとき自主投票だった公明は今回、佐喜眞を支援する。公明の基礎票は10万票前後とされ、うち6万票が前回は翁長票だったとすれば、今回はその分だけ玉城の票が減り、佐喜眞票が増える。また前回の知事選には下地幹郎(現・維新衆議院議員)も立候補して約7万票を獲得。維新が付く佐喜眞には、この分も加算される。