落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は、「休み明け」。
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予告した通り、弟弟子の春風亭一蔵と初めて甲子園で高校野球観戦してきた。出無精な私が真夏の甲子園なんて、自ら行くなんて絶対ない。一蔵の「甲子園は夢の国! 観とくべき!」という猛烈な推しで行くことに。でも真夏の炎天下にデブと甲子園……気がのらないなぁ……。
新幹線・ホテル・観戦チケットは全て一蔵が手配してくれた。バックネット裏を一蔵の奥さんが、チケットぴあに並んでとったらしい。カミさんを動員してまで私に甲子園の良さをわからせようという涙ぐましい夫婦の絆。二人とも好きだなあ、甲子園と俺のことが……。
当日の朝、寝坊した。仕事だと決して寝過ごさない私が、「後輩との遊び」ではまんまと寝坊。私の身体が完全に相手を見て動いている。一蔵すまん。起きたら新幹線発車の30分前。だが奇跡的に間に合った。我が家から東京駅の新幹線ホームまで、息をとめてダッシュで走れば28分で着くことがわかった。2分で支度したのか。一蔵はビールとカミさんお手製のお弁当を用意してくれていた。
私「心配させて……ハァ……ハァハァハァ……すま……ない」
一蔵「(ニヤニヤしながら)いえいえ、早速いきましょう! カンパーイっ!」
私「ハァハァ……わりぃ。水買ってきてくれ……ハァハァ」
一蔵「じゃ、4時起きのカミさんが作った……(重箱のフタをとる)」
私「ハァハァ……今、なんも食えない……ハァ……気持ち悪い……ハァ……!? クサッ!! なんかニンニクくさッ!……ダメだ……ハァ……フタしてくれ! 吐く! ちくしょうっ! 朝からこんな味の濃そうなもんこさえやがってっ! お前のカミさんはバカかっ!?」
一蔵「なんてこと言うんですかっ!?(怒)」