例えば肺に転移があって手術やラジオ波ができない場合でも、分子標的薬で転移が消えたことが確認できれば、手術やラジオ波ができるようになるケースもある。

 レンバチニブの副作用はソラフェニブやレゴラフェニブとは異なり、約半数の人に食欲不振、高血圧、タンパク尿が出現する。また、分子標的薬も肝機能が悪い人は副作用が出やすく、使用できない。

■今後も新たな薬が承認の見通し

 まだ治験段階だが、さらなる効果が期待されているのが、免疫チェックポイント阻害薬だ。がん細胞は、がん細胞を攻撃しようとする免疫にブレーキをかける。免疫チェックポイント阻害薬はその働きを阻害する薬で、分子標的薬に比べて副作用が少ない。特にレンバチニブと併用した場合の腫瘍縮小効果が高いことが、明らかになりつつある。近い将来、まずは免疫チェックポイント阻害薬単独での使用が承認される見通しで、薬物療法の選択肢がさらに増える。

 近年はC型肝炎やB型肝炎からの肝がんが減少し、脂肪肝から肝がんになる割合が増加している。脂肪肝が原因の肝がんの場合、進行して見つかるケースが多く、手術やラジオ波ができない。薬物療法のニーズは今後さらに高まっていくことが考えられる。

 また、肝がんは手術やラジオ波で治療できたとしても1年で約2割は再発する。そして再発をくり返すうちに、治療の手立てが減っていく。こうしたことからもさらなる薬物療法の進歩が期待されている。

虎の門病院肝臓内科
池田健次医師

武蔵野赤十字病院院長
泉 並木医師

(文/中寺暁子)

週刊朝日  2018年9月14日号