自分の名前がすぐに出てこない患者さんが、リズムに乗りながらだと自分の名前が言えたりするのだそうです。通常は過去のことを思い出すことができない人が、昔懐かしいなじみの歌を歌ったり、聞いたりすることで、昔のことをはっきり思い出し、その思い出を語ってくれたりするというのです。
認知機能が低下してしまって、会話が困難になっていても、ご本人が好きな歌だと歌うことができて、患者さん同士が交流することができるそうです。そういう事例を聞くと、音痴な私もいざというときのために、好きな歌をいくつか持っておいた方がいいなという気になります。
さて、こうした音楽のもつ力は認知症予防に対しては、どう働きかけるのでしょうか。
それは、やはり「心のときめき」だと思います。すでに書きましたが(5月25日号)、私は長年のがん治療の現場での体験から、心のときめき(生命の躍動による歓喜)こそが免疫力、自然治癒力を高める要因だと確信しています。
音楽を愛する人にとって、音楽はまさに心のときめきを生み出すものです。それは、私にとって太極拳が心のときめきを生むのと同様だと思うのです。
※週刊朝日 2018年8月17-24日合併号