浸水などの被害を受けた旭酒造の本社蔵前の直営店 (c)朝日新聞社
浸水などの被害を受けた旭酒造の本社蔵前の直営店 (c)朝日新聞社

 山口県岩国市の山あいにある旭酒造は、日本酒「獺祭(だっさい)」のブランドで有名だ。7月7日の豪雨で蔵元のそばを流れる川が氾濫(はんらん)し、大きな被害を受けた。桜井一宏社長(41)は言う。

「氾濫は深夜で、酒蔵の50メートルほど上流の橋に流木などが詰まり、土石流とともに一気に蔵に流れ込んできたようです。朝、東京出張から戻り、惨状にショックを受けました」

 蔵元近くの直営店の商品が全壊し、当日使う予定だった米約10トンも水につかった。最大の被害は12階建ての「本社蔵」の1階に約70センチの土砂が流れ込み、停電で生産設備がストップしたことだ。醸造タンクで発酵するもろみの温度管理ができず、被害総額は億単位に上るという。

「タンクのお酒は獺祭として胸を張って世には出せないと考えています。一定の味のお酒にはなるので、違うラベルでの販売など、廃棄せずに済む方策を考えています」(桜井社長)

 獺祭は酒米の王者と呼ばれる山田錦だけを使い、それを77%削った純米大吟醸の「磨き二割三分」などハイレベルな吟醸酒に特化することで、多くの支持を集めてきた。

 桜井社長の父、桜井博志会長が2011年にテレビ出演したこともあってブームに火がついた。

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