先行シングルとして発表された「世界はいつも夜明け前」は、アイズレー・ブラザーズや山下達郎を思わせる鮮烈なギター・カッティング、リズミカルなクラヴィネット、洗練されたエレピなど、聴きどころ満載のファンキーなソウル/ロック・ナンバーだ。
「Blues In The Rain」は、サム・クックの曲の歌詞を引用し、昭和の歌謡テイストも織り込んだソウル・バラード。レイ・チャールズを意識した根本の熱唱に加え、内田勘太郎のスライド・ギターの音色、根本とのギター・バトルが聴きものだ。
表題曲の「還暦少年」は、ドゥービー・ブラザーズ風のギター・リフによるブギ・ロック・ナンバー。“周りはみんな そろそろリタイヤ それでもまだまだ やりたいや”と韻を踏んだ歌詞、左卜全の「老人と子供のポルカ」からの“ズビズバ”コーラスなど、ユーモアたっぷり。根本と佐橋によるハーモニックなギター・プレイも聴き逃せない。
生ギターによるAORテイストのポップな「Windy」では根本が甘い歌声を聴かせ、カントリー・ワルツ調の「ジグソーパズル」では作曲の柿沼の歌唱が素朴な味わいを醸す。
アルバムを締めくくる「静かな愛で」は、根本のジョン・レノンへの敬愛を物語るラヴ・バラード。しみじみとした歌いぶりが耳に残る。
本作を聴くと、彼らが親しんできたロックやポップスへの熱い思いが、創造の原点だったことがわかる。抑制の利いた根本の歌唱、より洗練されたコーラスからは、年輪を重ねたゆとりもうかがえる。『還暦少年』は、ロックを基本にしながら、普遍的で娯楽性豊かなポップスを実践してきたスタ☆レビの魅力を満載したアルバムだ。