ゴーン会長は6月26日に横浜市内で開いた株主総会で、役員報酬をこう説明し、株主の理解を求めた。
「実績に報いると同時に自動車業界で最も優秀な人材をつなぎとめるため、競争力のある報酬が求められている。昨年度の、日産に匹敵する世界的な自動車会社の最高経営責任者(CEO)の平均報酬額は1770万ドル、調査した全企業のCEO報酬の中央値は1610万㌦だった。日産は経営陣に対して競争力ある報酬を支払っているとともに財務規律を徹底している」
ゴーン氏に代わって、自動車メーカーから10億円超えとなったのが、トヨタ自動車のディディエ・ルロワ副社長(60)。前年の6億8千万円から10億2千万円に増えた。ゴーン氏の出身・仏ルノーの副工場長を経て、トヨタの仏法人に転じた経歴の持ち主だ。
トヨタの豊田章男社長(62)は総額3億8千万円で、39位。ルロワ副社長と比べ、金額は3分の1にとどまる。ただ、保有株の配当収入も含めると金額は大きく変わってくる。豊田社長は自社株を約475万株持ち、年間配当額は10億円超。報酬と配当を合わせると14億円に達する。
ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長(60)も同様だ。役員報酬は1億3千万円だが、自社株を21%超持つ筆頭株主で、年間配当は約102億円。単純計算すると、3日間で1億円を稼ぐ経営者となる。
役員報酬ランキングの上位は最近、外国人が急速に増えた。今回もトップ10の半数を、トップ40の4分の1を外国人が占める。
象徴するのが、孫氏の率いるソフトバンク。トップ40入りした5人のうち4人が外国人。ロナルド・フィッシャー副会長(70)が2位、マルセロ・クラウレ副社長(47)が3位、ラジーブ・ミスラ副社長(56)が4位。3人ともに10億円を超えている。
一方で、急増する報酬額に対し、株主からは懐疑的な見方もあるようだ。
同社は6月20日の株主総会で、金銭による役員の報酬総額をこれまでの「年8億円以内」から、新たに「年50億円以内」に増やす議案を出した。理由は「グローバルレベルの経営人材獲得および報酬設計の柔軟性向上のため」。議案は可決されたが、賛成の比率は6割台にとどまった。ほかの議案は8~9割が賛成したのと比べ、差がついた。