仮に60歳までまったく保険料を払っていないとしても、「無年金」は避けられる。年金をもらうのに必要な加入期間は、かつての25年から10年に短縮された。後納や任意加入の制度をフルに使おう。例えば、過去5年分の保険料を後納し、65歳まで5年間任意加入すれば合計で10年になる。後納できない場合でも、年金をもらうのに必要な期間(10年)に達するまで、任意加入できる仕組みもある。

 年金問題に詳しく、「年金博士」とも呼ばれる社会保険労務士の北村庄吾氏は「特別支給の老齢厚生年金」に注意するよう呼びかけている。

「会社員が加入する厚生年金に1年以上入っていれば、『60代前半の老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金)』がもらえます。厚生年金の支給開始年齢は段階的に引き上げられているところで、例えば1955年4月2日~57年4月1日生まれの男性だと開始年齢は62歳。年齢や性別によっては、特別支給の老齢厚生年金が65歳より前にもらえる。自分の支給開始年齢を確認し、損をしないようにしましょう」

 65歳までに年金をもらうと減額されると思い込んでいると、思わぬ損をするのだ。

 保険料を払っていたのに、正しく年金をもらえていないケースは多発している。加入記録が正しくないと「未払い」が発生し、大金をもらい忘れてしまう。保険料を払っていた夫や親が亡くなってしまった場合も、諦めてはいけない。実際に約1900万円も取り戻せた実例があるのだ。

「年金事務所に相談しても『対応できない』と言われました。もう無理ではないかと放っておいたのですが、相談してよかった」

 こう話すのは埼玉県の60代の男性Aさんだ。Aさんは今年、2002年に81歳で亡くなった父親がもらえるはずだった年金約1900万円を“発掘”することができた。

 きっかけは亡くなった後に、日本年金機構から届いた封筒だった。「お客様のものである可能性がある年金記録」として、父親が1942~57年に7件の厚生年金に加入していた記録があるとの通知が入っていた。

 だが、父親が70年ほども前にどんな会社に勤めていたのか、すぐにわかるはずもなかった。

「通知にあった記録は私はまったく知らないものです。年金事務所に電話で相談しても、『会社名がわからなければ対応できない』と言われ、途方に暮れました」

 昨年6月、社会保険労務士の柴田友都氏に相談した。柴田氏はこれまで約5千件もの年金を発掘し、「年金探偵」とも呼ばれる凄腕だ。柴田氏から、「半年から1年くらいかかるかもしれないが、探してみましょう。見つからなければお金はいりません」と言われ、任せることにした。

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