

落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は、「新しい地図」。
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先日、TBS系の深夜番組『ゴロウ・デラックス』に出演しました。稲垣吾郎さんに拙著『いちのすけのまくら』を紹介して頂いたのです。だからこのテーマ? ザ・忖度? では私の「新しい地図」噺。
4月に「GWは高尾山に登る!」と宣言しましたが、4月30日に行って参りました高尾山。家族では唯一、次男(小4)だけが「パピコ(アイス)を買ってやる!」 というエサにつられて付き合ってくれました。出発前に家の前で記念撮影。最寄り駅までの間、早くもパピコの催促。「着いたらなっ!」と私。
高尾山着。「パピコはまだか?なければ帰る」攻撃に折れ、駅前のコンビニで購入。即完食。空の容器をくわえたまま、地図の前で二人立ち尽くす。ルートがたくさんあるのです。私「ケーブルカーで楽に行く?」。次男「嫌だ! キツい山道がいい!」。パピコの空容器を吹き込み吸い込み、ペコペコさせながら駆け出す次男。その勢い、ましらのごとく。私はすぐに完全な普段着で来てしまったことを後悔することに。高尾山舐めてた……。3時間ほどで息を切らせて山頂へ。
次男が空パピコをペコペコさせながら私を待ち構えています。「ソフトクリーム!」。拒否する元気もなく購入。食べ終えると「夕方からプールだから早く帰りたいっ!」と猿が駆け下りていきます。アホか。「置き去りにしようか」。一瞬頭をよぎりましたが、すぐに追いかけると、中腹で立ち止まってこちらを見ている次男。
「こんなとこに、僕の靴下かたっぽ落ちてたー!」。汚い靴下をつまんで叫んでます。「お前の? 今、靴下はいてるんだろ?」「うん」「じゃ、お前のじゃないだろ!」 「これ絶対僕のだよ!」「なんで高尾山にお前の靴下が落ちてるんだよ!?」
しばし口論に。「僕のだ!」と譲らない次男は、パピコの空き袋に靴下を入れ、リュックにしまい込みました。「なんで高尾山まで来て他人の靴下拾って帰んなきゃいかんのだ!(怒)」「……(涙目)……下りたら、アイス!!」「なんでだよっ! にしても、タイミング違うだろっ!!」。なんとか下山。ワーワー言いながら夕方前に帰宅。次男は「じゃあ、プール行ってきまーすっ!!」と飛び出していきます。なんなんだ、あの元気は……。