梅雨の季節に気になるのがカビ(※写真はイメージ)
梅雨の季節に気になるのがカビ(※写真はイメージ)
この記事の写真をすべて見る
毒物性アルツハイマー病の特徴(週刊朝日 2018年5月18日号より)
毒物性アルツハイマー病の特徴(週刊朝日 2018年5月18日号より)

 梅雨の季節、じめじめとした日が続くと気になるのがカビ。最新の研究で、カビが原因で発生する毒物や、水銀などの有害金属の毒性物質がアルツハイマー型認知症のリスクになることがわかってきた。原因を取り除くことで、治療と予防が期待できる。

【図表でみる】毒物性アルツハイマー病の特徴はこちら

 認知症の老人を描いた有吉佐和子の小説『恍惚の人』が発売されたのは、1972年のこと。それから半世紀近くが過ぎた今でも、認知症は不治の病として恐れられている。認知症の6割を占めるアルツハイマー病は、いまだに特効薬といえる治療薬がないからだ。

 アルツハイマー病は、脳内にアミロイドβ(以下、アミロイド)というたんぱく質がたまり、神経細胞が破壊されることが原因だと考えられている。今回、新たに判明したのが、アミロイドがつくられる原因の一つとして“毒性物質”がリスクになるということだ。毒性物質とは、水銀などの有害金属やカビから発生するカビ毒をいう。

 そもそも認知症の薬は、アミロイドが発生する原因を取り除くものではない。認知症治療薬の開発状況に詳しいジャーナリストの村上和巳さんは、こう話す。

「治療薬の開発は難航しています。患者の脳にはアミロイドが蓄積していることは確かですが、既存の薬はその蓄積の速度を遅くして認知機能の低下をゆるやかにするものです。すでに蓄積が進んだ患者には効果が乏しく、ごく初期の人にしか効かないのが現状です」

 2014年、アルツハイマー病の原因と新たな治療法についての研究論文を米国のデール・ブレデセン医師らの研究チームが発表した。同医師の著書『アルツハイマー病 真実と終焉』を翻訳した医学ジャーナリストの山口茜さんは言う。

「ブレデセン医師の治療法により、アルツハイマー病患者の回復が初めて報告されたのが、14年の論文でした。その後、一般向けに発売された著書は米国で半年足らずの間に20万部を突破するベストセラーになり、世界中から医師が研修に訪れています」

 アルツハイマー病などの神経変性疾患を30年間研究してきたブレデセン医師は、アミロイドが脳に蓄積する原因についてこう話す。

次のページ