米国、中国がそれぞれに高い関税をかけあい、米中貿易戦争が懸念されているが、“伝説のディーラー”と呼ばれた藤巻健史氏は、その可能性を否定する。
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JPモルガン勤務時、オフィスのビル内の店で子供ブランド服の7割引きバーゲンがあった。11時の開店と同時に大量に買ったが、部下のウスイ嬢に「みっともないから、国債を買うみたいに洋服を買いあさらないでください」と怒られた。子供たちには「お父さんとは趣味が合わない」と言われ、ほとんどの服がバザーへ直行となった。
ビル内にはプールもあり、昼休みに毎日泳いでいた。部下のクスノキ君にある日、こう言われた。「支店長、泳いだ後、タダだと思って整髪料をむやみにつけないでください。ディーリングルームが臭くてたまりません」。何事もやりすぎは良くないようだ。
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米中貿易戦争の懸念が続いている。関連ニュースが出るたびに株価や為替が乱高下し、今やマーケットを動かす注目材料の一つだ。
中国は資本の国外への自由な出入りを禁止し、人民元を低位安定させている。通貨が国力より強すぎたために没落した日本経済の教訓に、よく学んでいる。1980年に160円だった1人民元は、今や約17円ぽっちで買える。安い人民元をバックに貿易立国となった。元を切り上げろ、貿易黒字を何とかしろ、と米国が怒るのももっともだ。
貿易戦争懸念の一連のニュースを聞き、まず思い出したのは橋本龍太郎元首相の97年の発言。世界最大の米国債券保有国(当時)の日本の首相が「大量の米国債を売却しようという誘惑にかられたことは、幾度かあった」と述べた。
米国株式市場の関係者が大慌てしたのもよくわかる。本当に貿易戦争が起きるならば、中国の取りうる最大の報復手段は当時と同じ「米国債売却」だろう。
3月24日付の日本経済新聞朝刊でも、
<中国の米国債保有額は1兆1800億ドルと海外勢で最大。米財務省は「米国債を売られれば米経済はひとたまりもない」(関係者)と恐れる>
と報じられた。