野菜の高騰は消費者の購買意欲にも影響を与えている(c)朝日新聞社
野菜の高騰は消費者の購買意欲にも影響を与えている(c)朝日新聞社
4月に値上げとなる主な商品・サービス(週刊朝日 2018年4月13日号より)
4月に値上げとなる主な商品・サービス(週刊朝日 2018年4月13日号より)
家計が物価変動を感じる品目の割合(%)(週刊朝日 2018年4月13日号より)
家計が物価変動を感じる品目の割合(%)(週刊朝日 2018年4月13日号より)

 4月に入り、納豆は27年ぶり、ビールは10年ぶりに値上げした。他にも牛丼やインスタントコーヒーなど、家計に響く商品の価格が上がっている。

【図表でみる】4月に値上げとなる主な商品・サービス

 物価が上昇しても給料がそれ以上に上がるなら、生活は楽になるはずだ。デフレ脱却を実現するために、安倍晋三首相は毎年のように春闘で賃上げを求めてきた。今年は「3%以上」の賃上げ目標まで掲げ、経団連も各企業に同調するよう呼びかけた。

 ところが、春闘の結果を見ると、3%の賃上げにはほど遠い結果だ。

 連合の春闘第2回回答集計(3月23日発表)によると、1216組合の平均で6508円、2.17%の賃上げ。この数字は、実は定期昇給分を含んでいる。ベースアップ分が明確にわかる回答(814組合)でみると、1948円、0.64%の賃上げにとどまる。

 これに対し消費者物価指数は、生鮮食品を除くベースで1月が前年同月比で0.9%、2月は同1.0%の上昇。足元の物価上昇に、ベースアップが追いついていないことがわかる。

 つまり賃金が多少上がっても、それ以上に物価が上がっているので、生活は苦しくなるのだ。こうした傾向はこのところ続いている。厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、物価変動の影響を除いた実質賃金指数は昨年、前年を0.2%下回り、2年ぶりに低下した。

「企業の業績は好調だが、もうけたお金を賃上げに回さず、内部留保としてため込んでいる。企業側が賃上げに慎重なのは、いったん引き上げると経営が悪化しても下げにくいことがある。労組側も賃上げよりも雇用の安定を重視しており、強く要求しづらい。物価は今後も上昇が見込まれていて、家計はなかなか楽にはならない」(大手証券アナリスト)

 これでは個人消費は伸びず、景気回復にも勢いが出てこない。第一生命経済研究所の野英生・首席エコノミストも、こう指摘する。

「大雪もあって生鮮食品の値上がりが、消費者の財布のひもを固くしている。年金収入で暮らす高齢者にとっては、様々なものの値上げが消費の抑制要因になる。株価も足元では下落傾向で、景気回復は実感しにくい」

 みずほ総合研究所の酒井才介主任エコノミストは、ガソリン・灯油や生鮮食品、日用品といった身近な商品の価格に消費者は敏感だと指摘する。国内のレギュラーガソリン価格は原油高もあって、足元では2016年の年初より2~3割近く高い。こうした商品が高くなると、家計の「体感物価」は上がりやすくなる。

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