デビュー25周年を迎えた斉藤和義のニュー・アルバム『Toys Blood Music』の意表を突く展開に驚いた。
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斉藤和義と言えば、男気あるロッカー、豪快でパワフルなギター・ロック、ビートルズ・ライクなポップで親しみのあるメロディーやサウンド展開、多彩なスタイルの弾き語りというイメージがある。だが、新作ではジャングル・ビート、テクノ・ロックやエレ・ポップ風などに取り組んでいる。
斉藤は1993年に「僕の見たビートルズはTVの中」でデビューした。当初はシンガー・ソングライターとみなされていたが、当人にはそれがしっくりとこず、パフォーマーとしての側面を積極的にアピール。作詞、作曲だけでなく、すべての楽器を演奏し、多重録音するスタイルを実践し、自らプロデュースを手掛けるようになった。
97年発表の「幸福な朝食 退屈な夕食」や、後に多くのミュージシャンにカヴァーされた「歌うたいのバラッド」などで注目を集めた後、2008年に「やぁ 無情」でオリコンで初のトップ10入りをはたす。以後、順調にヒットを放ち、「ずっと好きだった」(10年)でビッグ・ブレイク。続く「やさしくなりたい」(11年)もヒット。その2曲でのビートルズへのオマージュを込めたヴィデオ・クリップも話題となった。
今回の新作は『風の果てまで』(15年)以来のオリジナル・アルバム。同作では盟友であるドラムスのチャーリー・ドレイトン、ローリング・ストーンズのサポート・メンバーであるベースのダリル・ジョーンズなどを起用していたが、今回は従来通り、多重録音スタイルに戻った。しかも、ドラム・レスならぬドラマー・レスでのレコーディング。ドラマーにとって代わってドラム・マシーンを積極的に起用した。
80年代に盛んに使用されたヴィンテージのリズム・マシーン、“やおや”の通称で知られるローランドのTR―808を入手。ドラム・マシーンの名機とされたリン・ドラムも借り、古いマシーンが持つ独特の音色、質感やクセに惹かれ、その面白さにはまったという。