佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問が行われることになった「森友疑惑」。ジャーナリストの田原総一朗氏は、麻生太郎財務相の今後と、森友学園元理事長の籠池泰典氏への過去のインタビューについて言及する。
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なぜ、麻生太郎財務相は辞任しないのか。
3月2日に朝日新聞が、財務省が森友学園との国有地取引に関する決裁文書を書き換えた疑惑がある、と報じた。朝日新聞の報じ方は自信に溢れていて、根拠となる資料を入手していると思われる。
ところが、麻生財務相は国会での野党の追及に、説得力のないあいまいな答弁に終始した。原本は大阪地検のもとにあって国会に取り寄せることは不可能で、書き換えがあったか確かめようがない、というのだ。しかし、これは財務相とも思われない幼稚な誤りだ。国会には国政調査権というものがあり、国会から提示を求められれば、地検にはそれを拒否する権限はないのである。
財務省は逃げまくったが、国会に提示しない理由がなくなり、提示はした。だがなんと、それは改ざんした後の文書であった。ナンセンス極まりなく、わざわざ国民の信頼を失わせる行為だ。その後、自民党幹部たちからの要請もあって、やっと原本らしきものが提出された。
私は原本が提出されると知ったとき、当然、麻生財務相は辞任すると考えた。自民党の幹部3人にそのことを言うと、3人とも「辞任すると思う」と答えた。一人は現職大臣だ。
だが、麻生氏は辞任せず、改ざんは理財局の一部の職員によって行われたと説明した。責任者は、当時の理財局長だった佐川宣寿氏であり、動機は、事前の価格交渉を否定するなどした佐川氏の国会答弁と文書の内容に齟齬(そご)があったので、答弁に合わせるため書き換えたのだという。
そもそも森友学園に対する国有地売却の価格が、なぜ8億円も引き下げられたのか。その理由を記したはずの記録を佐川氏は破棄したと答えたが、実は破棄されていなかった。事前に森友側と価格などを含め一切交渉してはいない、と証言したが、価格を含めて学園側と交渉していた録音データが残っていた。