ラップランドの秋はほんの一瞬で、森林はあっというまに黄葉して、三日間ほどで散ってしまい、それから長い冬に入る。ラップランドの森には木いちごの実がなっているが、チェルノブイリの原発事故のため、放射能汚染されて食べることができなかった。トナカイの肉も汚染されていた。ロヴァニエミの近くにサンタクロースのふるさとがある。ラップランドの森は放射能汚染がおさまったのだろうか。
「冬戦争」における小国フィンランド軍の猛奮闘と善戦に世界の国々は拍手を送り、理不尽なソ連の侵攻を非難した。
このあと、ナチス・ドイツ軍は、ノルウェーとオランダを占領し、パリ無血占領とつづいていくのですが、ソ連をも侵攻していく。
と、『世界史のなかの昭和史』は北欧に飛び、ソ連に流れ、半藤探偵は時空を超えて、講談調で大義も正義もないマックロコゲの悲惨を語っていく。2004年2月に『昭和史 1926−1945』を刊行して十五年がかりで半藤昭和史が完結した。
父は体験的戦争譚を面白悲しく語って、十八年前に没した。半藤昭和史を読むと歴史の点と線がつながり、なんで「負けるとわかっている戦争」に突っこんでいったのかを考えさせられる。国家的テロリズムは、批判者に対する粛清を平気でやる。まもなく平成時代は終わるが「歴史はくりかえす」。半藤探偵は八十七歳、老いてますます明晰、自在、誠実で、いまの時代を生きる人への警鐘を鳴らす。
※週刊朝日 2018年3月16日号