平昌五輪に乗り込んだ北朝鮮の美女軍団らの「ほほえみ外交」の影響などですっかり融和ムードを醸している北朝鮮と韓国だが、南北首脳会談の実施も現実味を帯びている。
北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の実妹、金与正氏(キム・ヨジョン)が加わった高位級代表団は、五輪開会式に合わせて訪韓。2泊3日の滞在期間中に、文在寅大統領は与正氏と食事接待も含め4度も会談した。
ジャーナリストの裴淵弘(ベ・ヨンホン)氏がこう語る。
「最後はソウルでの三池淵(サンジヨン)管弦楽団公演での歓談でした。与正氏は別れを惜しむように文大統領の手を両手で握ったのです。その映像は韓国国民に強烈なインパクトを与えました。この3日間は北朝鮮側がアピールしたかのような印象を与えていますが、水面下ですべてお膳立てしたのは韓国の国家情報院です。文政権としても南北融和の演出は成功裡に終わったと言えるのです」
首脳会談については、正恩氏の考えとして与正氏から口頭で伝えられた。文氏は「今後、条件を整えて実現させよう」と応じた。文氏が非核化に言及しなかったというが、対話が決裂することを懸念したからにちがいない。
韓国政府は、すでに南北離散家族の再会事業費として7億3000万ウォン(約7300万円)の予算を確保。今後も南北対話の流れを作っていきたい意向とみられる。
そもそものきっかけは、金正恩氏が新年の辞で「平昌五輪の成功を祈る」などと韓国側にエールを送ったこと。北朝鮮が突如として融和ムードに転換したのは、米国からの先制攻撃を警戒していることに加え、国連制裁が重く圧し掛かっているのは明らかだ。もともと対話路線を掲げていた文氏もこれに応じ、2月に予定されていた米韓合同軍事演習「フォールイーグル」を、平昌五輪開催を理由に4月1日まで延期していた。
「合同軍事演習のさらなる延期や、演習の縮小を求める声が文政権内で絶えません。もちろん、米側は黙っていないでしょうから、米韓FTAの破棄を実行されるかもしれない。しかし、文政権の意図は、南北対話を続けることで米朝間の落としどころを模索したいということなのです」(裴氏)