落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は、「連覇」。
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『連覇』。したり、逃したり、期待されたり、応えられなかったり。世の中にはいろんな『連覇』が蠢いています。
辞書によると「続けて優勝すること」、ですが落語界にはあまり『連覇』はありません。
賞のかかった落語のコンテストは、たいてい若手を対象としたもの。もしもキャリアを問わず、誰でも参加できるコンテストに、なりふり構わぬ大名人が参加し続けたら「○○師匠、今年で38連覇!」みたいなコトになるのでしょうか。やだな……そんな名人。そもそも落語の優劣なんて数字で測れるものではないし、笑いの量と技術が拮抗してればあとは審査員の好きか嫌いか。賞を獲ったから落語家としてランクが上とか下とか考えないほうがいいです。そんなこと言っちゃうと元も子もないけどね、でもホントそう。
何回も続いている若手のコンテストはたいがい一度優勝したら、もう出られません。
ですが……某演芸場主催の、某演芸大賞は演者と主催者の同意があれば何年間も続けて出られます。出場資格はその演芸場がセレクトした芸歴20年以内の芸人。年間を通じて月一の演芸会を開催。レギュラー制で一人年2回の出演枠が与えられ、大賞・金賞・銀賞が決まるというなかなかに歴史のある会です。
ありがたいことに私、平成23年度に大賞を頂戴しました。19年度に銀賞をもらって以来の受賞。銀→金→大賞と順繰りにいくのかと思ってたら、金を飛び越えて大賞。贈賞式の後、「早く賞金で飲みに行こう!」とヘラヘラしてたら、会の担当者さんがやってきて「来年度もご出演頂けますよね?」とのこと。「芸歴20年まではまだずいぶんありますから、こちらとしては出て頂ければありがたいです」「そうですね! ありがとうございます!」。頭のなかが完全に飲みに行くモードになっていたので、即答で引き受けた私。打ち上げにて。