気管支や肺胞(肺の組織)の病気「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」は、たばこなどに含まれる有害物質を長年、吸い込み続けることで発症。世界の死亡原因第4位、国内の潜在患者は530万人と推測されるが、多くは治療を受けないで、放置しているという。
軽いうちは咳や痰、息切れなど呼吸器の症状だけで済むが、進行すると体重減少や筋力の低下、疲労など症状が広がる。これを予防するのが、“食”なのだ。
長年、COPD患者の栄養改善に取り組む管理栄養士で、駒沢女子大学人間健康学部健康栄養学科教授の田中弥生さんは、「COPDの患者さんが痩せているのは、消費エネルギーに比べ、摂取エネルギーが足りていないため」と話す。
「患者さんは息が苦しいので、呼吸筋をフルに使って全身で呼吸をします。それは常にマラソンをしているようなもので、それだけ多くのエネルギーを使っています。加えて、肺から全身に回った炎症を抑えるため、そこでもエネルギーが使われる。健康の人の1.5倍のエネルギーが必要になるのです」(田中さん)
COPDの患者は、普通の人よりも1日あたり300~700キロカロリー、エネルギーを多くとらなければならない。だが、呼吸が苦しいために食欲が出ず、炎症で壊れて広がった肺によって胃が圧迫されているため、少しの食事量でもすぐに満腹に感じ、エネルギー不足になりやすいのだ。
エネルギー不足に陥った体は、脂肪や筋肉などの組織をエネルギーに替えて生命維持を図ろうとする。そのため、痩せた患者ほど予後が悪い。実際、COPDの死因は肺の炎症だけではなく、低栄養によるものが多いというデータもある。
「エネルギーやタンパク質を十分に補えれば、低栄養は予防でき、命の危険にさらされることもなくなる。もっと食事のことを考えてほしい」(同)
そんな田中さんが考える「COPD患者のための不老メシ」とは、「タンパク質や脂質を増やす『高エネルギー、高タンパクの食事』『最低1日1回は間食(おやつ)』。ダイエットとは正反対の考え方です」(同)。