しかし昨年12月にフェイスブックが公表した研究結果によると、パブリックコンテンツを受動的に見続けた場合、メンタルヘルスに悪影響を与えることがわかったのだという。一方で、親しい人たちとコメントなどで交流した場合には良い影響がもたらされたと指摘。こうした結果を受けて、「つながりをより密にする」方向にかじを切ったというわけだ。

 同社はこれまでAIの導入や外部ジャーナリズム組織と連携してフェイクニュース対策を行っていたが、なかなか効果を上げることができなかったため、そもそもニュースを表示させる機会を減らす選択をしたのだろう。表向きには「知人同士のコミュニケーションを促進する変更」ということだが、実際にはフェイクニュースの問題にさじを投げたということなのかもしれない。

 しかし、この方向転換は痛みを伴うものとなるだろう。マーク・ザッカーバーグCEO自身、フェイスブックが短期的に不利益を被ることを認めている。フェイスブックにニュースや動画を投稿してきたメディアや企業も利用者に情報を届ける機会を失うことになる。米国民の3分の2がソーシャルメディアからニュースを取得し、ニュースサイトが外部流入の4割をフェイスブックに頼っているとも言われており、その影響は計り知れない。

 ザッカーバーグCEOは発表にあたり「フェイスブックは単に楽しいだけでなく、利用者のウェルビーイングに資するものでなくてはならない」と語った。同社は創業以来、何度か大きな設計の変更を行ってきた。今回の決断もそうした大変更の一つであることは疑いがない。これから目指す方向性に全世界の注目が集まっている。

週刊朝日  2018年2月2日号

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津田大介

津田大介

津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『情報戦争を生き抜く』(朝日新書)

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