「そうですね。人生の楽しい思い出や過去の素晴らしい成功談は確かに大事なものかもしれません。でも過去の輝かしい経験にいつまでもしがみつくことで、逆に不幸になっている場合もありますからね。『昔自分は社会的にこんなに偉かった』『こんなにすごかった』。そういうものもすべて捨ててしまい、心を、脳をからっぽにすれば、いつも『いま』が大事に思えてきますでしょう? 大切なのは昔ではなく現在なのです。その新鮮な気持ちを持つために坐禅は有効だと思いますよ」

 できれば毎日寝る前と起きたときに5分ずつ。

「短い時間でも自分の呼吸を感じる時間を持つことは、とても意味があることだと思います。でも忙しいときは1週間に1回、土日のどちらかの日にやるくらいでも構わないと思います。ほんの5分でも坐禅を組んで、心のゴミを捨ててください。1週間の間に起きた悪いことも良いことも坐禅で捨てて、次の新しい週に入るのです。何ごとにもとらわれない。これが一番大事なことなんですよ」

★まずは坐り方から
【結跏趺坐(けっかふざ)】
まず右の足を左の太腿の上にのせる。そしてさらに左の足を右の太腿の上にのせる。

【半跏趺坐(はんかふざ)】
結跏趺坐が無理な人は、右の足を左の太腿の上にのせるだけでもかまわない。

★次に手を組む
【法界定印(ほっかいじょういん)】
坐禅を行うときの最も一般的な印相(手の組み方)が、法界定印。組んだ足の上に、右手のひらを上に向けてのせ、左手も同じように上に向けて右手に重ねる。そして左右の親指の腹をくっつく寸前のところまで近づける。

身体を前後左右に動かし重心を安定させる。重心が定まったら腰を伸ばして上半身をまっすぐにする。首はしっかり立てて顎を引く。そして1.5メートルほど先に視線を落とし、そこをぼんやり眺める。するとまぶたの緊張がほぐれ、半分目を閉じた状態に(半眼)。最後に身体の力を抜き、無理のない程度に背骨をまっすぐに立てる。

(エディター・赤根千鶴子)

週刊朝日 2017年12月22日号