名盤『ホテル・カリフォルニア』で世界を席巻したイーグルス
名盤『ホテル・カリフォルニア』で世界を席巻したイーグルス
イーグルス『ホテル・カリフォルニア:40周年記念エディション』
イーグルス『ホテル・カリフォルニア:40周年記念エディション』

 1976年12月発表のイーグルスの『ホテル・カリフォルニア』はロック史に残る名盤。このほど、リマスターされた『40周年記念エディション』が発表された。音が驚くほど鮮明になり、とりわけ表題曲「ホテル・カリフォルニア」に魅せられた。

 オリジナル盤は77年1月にアルバム・チャートの1位を獲得。同作からのシングル「ニュー・キッド・イン・タウン」と、後にグラミー賞のレコード・オブ・ジ・イヤーを獲得する「ホテル・カリフォルニア」がともに全米1位に輝いた。「駆け足の人生」も11位のヒット。アルバムはミリオン・セラーどころか、世界中で3200万枚以上のセールスを記録し、なお記録を更新中である。

 誰もが耳にしたことのある名曲「ホテル・カリフォルニア」。私のこれまでの楽しみは、ドン・フェルダーとジョー・ウォルシュのギター・ソロ・バトルや、コーダでのギター・ハーモニーだった。今回、リマスターの音に触れ、イントロのギター・ワークの虜となり、何度も聴き直した。

 何かが起こりそうな期待感よりも、むしろ不安をかきたてるような12弦ギターのアルペジオや生ギターやベースの調べ。10本以上のギターがダビングされたイントロに次いで、しゃがれ声のドン・ヘンリーの歌が始まる。その隅っこで繰り返されるレゲエ・スタイルのギター……。

 ドン・フェルダーが手がけた12弦ギターによるリフを録音したテープをドン・ヘンリーとグレン・フライに手渡したことからすべてが始まった。当初、“メキシカン・レゲエ”と仮タイトルが付けられたその曲は、ドン・ヘンリーとグレンによって歌詞とメロディーが書かれた。2度の試行錯誤を経て、3度目に曲は仕上がった。

 それをライヴ録音し、プロデューサーのビル・シムジックが五つのテイクからヴァースやコーラスごとにベストなものを編集し、マスター・テープを作成。その数33本に及んだという。バック・トラックができた後、楽器の差し替えやリード・ギターのダビング、ミキシングを経て完成された。

著者プロフィールを見る
小倉エージ

小倉エージ

小倉エージ(おぐら・えーじ)/1946年、神戸市生まれ。音楽評論家。洋邦問わずポピュラーミュージックに詳しい。69年URCレコードに勤務。音楽雑誌「ニュー・ミュージック・マガジン(現・ミュージックマガジン)」の創刊にも携わった。文化庁の芸術祭、芸術選奨の審査員を担当

小倉エージの記事一覧はこちら
次のページ
イーグルスが「ホテル・カリフォルニア」に託した意味とは