そして忘れちゃならないのが『パブロン』です。三田佳子&後藤久美子による母娘シリーズは、まさに風邪薬界の黄金期であり、主婦設定には到底結びつかない肩パッド入りのセーターやワンピースを纏った三田佳子さんが放つ名フレーズ『効いたよね~ッ! 早めのパブロン!』は、消えゆくバブルの叫びでもありました。その後竹下景子さんを経て、2011年からは3代目パブロン母に松嶋菜々子さんが起用されています。が、この松嶋さん、とにかく怖い。母娘のほのぼの設定にもかかわらず、今にも「あのね、ママはホントのママじゃないの」とか、「このお薬飲んだこと、誰にも喋っちゃダメよ」的なことを言い出しかねないサスペンス臭がぷんぷんするのです。松嶋菜々子さんには昔から明白な闇を感じていましたが、教え子とデキてしまう高校教師や、過去のある家政婦なんかより「いちばんヤバいのは、この“パブロン菜々子”なのでは?」と思うぐらいの怖さ。
家(かなりの豪邸)の中がいつも間接照明のように薄暗く、朝になっても父親の気配が一切なくても気にせず「効いたよね!」と笑い合う母娘の母の目が笑っていないなんて、そんなこと気付いたら最後……。今年の冬も目が離せません。
※週刊朝日 2017年11月17日号