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 ここ数回、1950年代から多くのジャズ・クラブが覇を競った7th アヴェニュー・サウスを南下している。その中心的クラブの、ヴィレッジ・ヴァンガードは今も健在だが、ブレッカー・ブラザースがオーナーで、フュージョンのメッカだった7th アヴェニュー・サウスや、ギル・エヴァンス(arr,p,kb)のマンデイ・ナイト・オーケストラや、晩年のアート・ブレーキー(ds)のホーム・グラウンドとして知られた、スウィート・ベイジルは、もうない。

 しかし、前回、前々回紹介した、スモールスや、ファット・キャットのような新興店の台頭も見られ、このエリアは今も、かつての残照を感じさせる。

 その中で、いわゆる近所の人々がたむろして、一日の終わりの一杯を味わうバーのエンタテインメントとしてバンドが出演し、ノーチャージで気軽に音楽を愉しめるスタイルで、1937年から続いているスポットが、このアーサーズ・タヴァーンだ。店内は、ハロウィーン、クリスマス、ニュー・イヤー、セント・パトリック・デイ、イースターなど、季節のイヴェントのデコレーションが雑然とそのまま飾られていて、毎日がパーティのような雰囲気を醸し出している。

 月曜の夜に出演するGrove Street Stompers Dixieland Jazz Bandは、ここに35年出演しており、ニューヨークにいながらにして、ニューオリンズへとタイムスリップした錯覚を味あわせてくれる。基本的に7時からのセットはジャズ、取材に訪れたこの日には、アーサーズのハウス・ドラマーである平川雄一のグループに、70年代初頭からNYで活躍する日本人ミュージシャンの草分け増尾好秋(p)が、スペシャル・ゲストで登場。カジュアルなプレイを聴かせてくれた。10時以降のセットは、ブルースやファンク・バンドが盛り上げてくれる。定番のポップ・チューンのカヴァーを一緒に口ずさむと、気分はすっかりヴィレッジ・ピープルとなる。

■Arthur's Tavern (アーサーズ・タヴァーン)
57 Grove Street (7th Avenue South)
New York NY 10014
tel. 212.675-6879
http://www.arthurstavernnyc.com/
ライブは毎晩19:00~22:00、22:00~3:00 と2つのバンドが登場し、2.3セットの演奏をする。