職場の上司と部下など異なる世代が同じ場を囲み、交流したカラオケ。最近は楽しみ方が変わってきたようだ。西川さんが続ける。

「世代が近い人同士、趣味が合う人同士で一緒に歌う傾向ですね。テレビ全盛期はお茶の間に歌番組が流れ、どの世代も一度は聞いたことのある曲が多かったです。今や音楽はネット配信中心で、自分の好きな曲だけを選んで聞きます。若者でも、AKB48の『ヘビーローテーション』をみな歌って踊れるわけではありません。洋楽、フェス系のバンド曲、ダンスミュージックなど、好みはますます細分化しています。ひとりカラオケが人気なように、大衆から“分衆”さらに“個衆”の時代ですね」

 確かに、だれもが知る曲、だれもが口ずさめる曲は減った。みんなで一緒にノリにくい。スマホが広がり、歌っていない人はメールやSNSのチェックで手元の画面に見入る。

 純粋に歌を楽しみたい人の間では、ひとりカラオケが人気だ。選曲などで上司や同僚に気を使う必要がなく、歌を聴く周囲の反応に煩わされることもない。

 ジャニーズ、Kポップなど同じジャンルの曲が好きな人同士で集まるのも、最近のカラオケの傾向の一つだ。一人が1曲を歌ういつものスタイルではなく、みんなで順番にマイクを回しながら歌っていく。

 この20年間、カラオケ離れが進んだが、実は音楽離れは進んでいない。音楽好きが楽しめる場をいかに提供するか。カラオケの施設側も、新たな手を打っている。

「ビッグエコー」を展開する第一興商は、東京都内の店舗に「フェスカラルーム」を年内に設ける。同社の仁井裕美さんは「昨今人気を集めている音楽フェスの臨場感を最大限に体感できる、新スタイルのカラオケルームです」という。

 二つの大型スクリーンがあり、歌詞の出るカラオケ画面と、バンドメンバーや会場のファンの様子が別々に映し出される。まるでライブ会場で歌うかのような感覚を味わえる部屋もある。

 フェス世代の若者向けの空間ばかりではない。小さな孫と3世代で楽しめるキッズ対応の部屋や、コンビニ併設で好きな飲み物や食べ物を持ち込める店もある。

「カラオケボックスは、学生がワイワイ騒いだり飲み会の2次会の場所として利用したりするイメージでした。近年は昼間利用や一人利用の増加などもあり、ニーズが多様化しています」(仁井さん)

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