Reunion: Live in New York
Reunion: Live in New York写真・図版(1枚目)| 『リユニオン:ライヴ・イン・ニューヨーク/サム・リヴァース、デイヴ・ホランド、バリー・アルトシュル』
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<サム・リヴァース・フェスティヴァル>でのライヴ
Reunion: Live In New York / Sam Rivers Dave Holland Barry Altschul(Pi Recordings)

 2011年12月に88歳で逝去したサックス奏者のサム・リヴァースは、1960年代にフリー・ジャズと新主流派に参画。64年のマイルス・デイヴィス来日公演に参加したことで日本では知られる存在だ。

 2007年5月、米コンロンビア大学のラジオ局WKCRは、1週間にわたって<サム・リヴァース・フェスティヴァル>と題した特集番組を組んだ。公式アルバムや未発表コンサート音源、リヴァースおよび関係者のインタヴューを昼夜通じて放送する内容であった。その時に開催されたコンサートを収録したのが本作である。

 64年から67年にブルーノートへアルバム4枚分のリーダー録音を行ったリヴァースは、その最終作『ディメンションズ&エクステンションズ』で初めてピアノレスのバンドを編成。71年からはベース+ドラムスのトリオでレコーディングを始め、73年8月の<モルデ・ジャズ祭>にはバリー・アルトシュルを擁するトリオで出演した。作品上では75年のクインテット作『シズル』にデイヴ・ホランドが初参加し、76年2月にはリヴァースとホランドのデュオ作を録音。そしてアルトシュルを含むトリオの成果は76年3月の『ザ・クエスト』(Red)と、77年の『パラゴン』(Fluid)に結実している。少しさかのぼると、3人は72年のホランドのリーダー作『鳩首協議』(ECM)で共演しており、アンソニー・ブラクストンが加わったクァルテットは、チック・コリアが抜けた“サークル”にリヴァースが加わった顔ぶれとも重なって興味深い。

 3人は72年秋から78年夏まで共演関係を続けた。当時のリヴァースはスタジオ・リヴビーを運営する、ロフト・ジャズ・シーンの中心的な存在。3人は昼の11時から夕方5時までをジャム・セッションに充てるのが日課で、アルトシュルによれば「誰かがトイレに行った時はデュオ、食事の時はソロで演奏を続けた」という。これによって彼らが音楽的コミュニケーションを育んだことは疑いない。

 この2枚組ライヴはディスク1のファースト・セットが51分43秒、ディスク2のセカンド・セットが35分16秒で、それぞれが切れ目のない演奏だ。前半のリヴァースはテナーで始まり、ピアノ~ソプラノ~フルートと持ち替える。後半はフルートを皮切りにテナーを使用。その間、各人のソロ、デュオも盛り込まれる。即興演奏が自然発生的な流れを作るあたりは、70年代に築いた関係がタイムラグなしに甦った賜物だ。大御所になった彼らが、あの頃と変わらぬ創造性を発揮したのが嬉しい。終演直後にリヴァースが2人を紹介し、ホランドがリヴァースを紹介。その満足げなアナウンスがすべてを物語っている。

【収録曲一覧】
Disc 1:
1.~5. Part 1~5
Disc 2:
1.~4. Part 1~4

サム・リヴァース:Sam Rivers(ts,ss,fl,p) (allmusic.com へリンクします)
デイヴ・ホランド:Dave Holland(b)
バリー・アルトシュル:Barry Altschul(ds)
2007年5月25日 ニューヨーク録音

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