「東洋医学では、人の身体には『経絡』という道が存在すると考えられています。経絡は全身を巡り、いろいろな内臓や筋肉、関節につながっていて、私たちが生きていくのに欠かせない、『気』『血』『水』を運ぶ役割があるとされています」
「気」はエネルギーのようなもの、「血」は血液、そして「水」は身体の中の水分の総称と考えられる。
「経絡上に存在しているポイントが『ツボ』です。ツボは身体の外と内をつなげる特殊な場所です。押したりさすったり、お灸したりすると、刺激しているツボのまわりの気血水の流れがよくなり、そのツボ周辺と、そのツボに関連する臓器の調子などを整えることができるのです。それが今回ご紹介するツボ『支溝(しこう)』です。この支溝は、気持ちを和らげ、大腸がスムーズに働けるように導いてくれるツボです。便が硬くなりがちな人に、特におすすめです」
支溝は一日に何度押してもかまわない。会社などで同じ姿勢で座りっぱなしの人ほど、空いた時間に刺激するのがおすすめだ。
「ずっと同じ姿勢で座りっぱなしだと、エネルギーが滞りがちになり、からだの不調を呼びやすくなってしまうのです。デスクワークが多い方はなるべく意識して、ツボ押ししてほしいですね。支溝の位置は、甲側の手首のシワから指4本分ひじ寄りのところにあります。親指を除く4本指を押し当てて、広い範囲を押し回してみてください。支溝は一日に何度刺激してもかまいませんが、もし寝る前に行うのであれば、やさしくさする程度にしてください。反応が出やすいツボですから、あまりギュウギュウ押すと、気分が悪くなる場合もありますので、よくよく気を付けてください」
支溝のほか、万能のツボといわれている「合谷(ごうこく)」を刺激してもよい。
「合谷は有名なツボなので、ご存じの方も多いかと思います。手の甲側で、親指と人さし指の延長線が交わった部分です。やや広めの範囲で反応を探り、へこんでいる、コリコリしている、鈍い痛みがあるところなどを探しましょう。そして、気持ちのいい反応が感じられるところを刺激していくのです」
合谷は大腸に関係の深いツボ。ゆえに便秘解消や下痢の対策などに常用されている。
「そのほか花粉症対策にもいいですし、目の疲れや歯の痛みなど、顔まわりの不調の改善対策にも使われています。ツボ押しのあとは全身の気血水の巡りがよくなります。水分補給はきちんとするように心がけましょう」(エディター・赤根千鶴子)
※週刊朝日 2017年10月13日号