なぜなら、安倍さんの考えには理念や信念がない。政策に「魂」が入っていないのです。これは、アベノミクスと共通する特徴で、土台となる理論がない。ライオンの頭、ヤギの体、蛇の尻尾をもつキマイラのような化物なのです。
一方、前原さんが掲げる「オール・フォー・オール(みんながみんなのために)」の理念は財政社会学者の井手英策・慶応大教授と勉強会を重ね、2年以上かけてつくり上げたものです。また、前原さんは中学生のときにお父さんを自殺で亡くしています。それでも苦学して京都大に入り、政治家になった。しかし、現在の日本は学費が高騰し、自分と同じ境遇の中学生は今では大学にすら行けないかもしれない。その思いが前原さんの政策や思想の背景にある。そうやって前原さんがつくり上げてきたものを、時の首相が「密輸入」しようとしているのです。
安倍首相が本気で政策転換をするなら、小さな政府を目指している自民党を大きく変えることになる。まずは、自民党内で同意を得ることが先です。その意味では、安倍首相が今やるべきことは解散総選挙ではなく、自民党の総裁選を実施して、党内の国会議員に前原民進党の政策への同意を求めることです。
(本誌取材班=西岡千史)
※週刊朝日 2017年10月6日号