衆議院解散の意向を示した安倍晋三首相。ジャーナリストの田原総一朗氏はなぜこのタイミングなのか思惑を探る。
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安倍晋三首相が9月28日、臨時国会冒頭に衆議院を解散する公算が大きくなってきた。
朝日新聞は20日の社説で「大義なき『身勝手解散』」だと断じ、次のように批判している。
「野党は6月、憲法53条に基づく正当な手続きを踏んで、臨時国会の早期召集を要求した。これを3カ月以上もたなざらしにした揚げ句、やっと迎えるはずだった国会論戦の場を消し去ってしまう。まさに国会軽視である。そればかりか、憲法をないがしろにする行為でもある。(中略)首相が『仕事人内閣』と強調した閣僚メンバーの多くは、まだほとんど仕事をしていない」
各メディアが、連日のように「大義名分のない自己保身解散」だと厳しい批判を報じている。
森友・加計疑惑で30%以下に落ち込んだ安倍内閣の支持率が、40%台、メディアによっては50%台に回復した。それに対し、民進党は次から次へと議員が離党し、期待された女性議員がスキャンダル報道で離党するなどまとまりを欠き、小池百合子東京都知事に近い議員たちの新党も準備が遅れている。
安倍首相は、今こそ選挙のチャンスだととらえたのではないか。それに、国会が始まれば当然、野党は森友・加計疑惑を厳しく追及する。そこで、野党はもちろんメディアも、「露骨な疑惑隠し解散」だと手厳しく批判している。
民進党の前原誠司代表は「北朝鮮による緊迫した状況をまったく度外視し、国民の生命財産をそっちのけ。無責任そのものだ」と怒り、共産党の志位和夫委員長も「究極の党利党略、権力の私物化、憲法違反の暴挙」だと憤っている。自民党内部でも「大義がない。敵が弱いときに延命を図るだけ」だという疑念が続出しているようだ。
たしかに、今が選挙のチャンスと安倍首相がとらえている面は少なからずあると思う。現に自民党が有利との数字が出ているようである。