実際、業者が銀行に支払った手数料分を建築価格に上乗せしているか否かは素人では判断できない。金融庁は「銀行は判断できる立場」とし、顧客本位の業務運営を求めている。
元地方銀行の融資担当者は顧客本位とは程遠い実情をこう明かす。
「顧客は、メインで利用する銀行からサブリース契約を紹介されれば、まず信頼する。さらに融資の確約まで得られれば、他社と比較せず金額交渉もしない。銀行への紹介手数料分が顧客の負担になり、建築価格が膨らんでもまず、わからないだろう」
ある大手地方銀行の融資担当者はこう打ち明ける。「支店の業績表彰のために、事業性融資の金額の底上げが必要になる。アパート融資を推進する理由は、高金利のほかに、アパート融資もこの事業性融資に組み込まれていることが要因」
事業性融資とは、企業が手がける事業の成長性などを評価して貸し出す仕組みだ。この事業性部門は支店の要で、融資担当者にとって、アパート融資の目標達成は人事上での評価も高いという。
「これまで銀行全体としてアパート融資に積極的だった。一定の給与収入があれば、支払い能力があると判断し、アパートの家賃収入の試算が甘くても融資できた。(貸出額を引き上げるための)最後の頼みの綱だった」(前出の担当者)
しかし、ここ半年ほどで雰囲気が変わった。
「本部がアパート融資に歯止めをかけ始めている」というのだ。
それでも現場レベルでは貸し出す企業がなければアパート融資に頼る現状は変わっていない。
「震災復興需要で業績が良い企業にアパート融資をお願いしたりして、企業向け融資(事業性融資)を稼いでいる支店が多い」のが実情だ。
日銀が8月10日発表したアパート融資の新規融資額を示す「個人による貸家業」の統計によると、4~6月期は7171億円で、前年同期比で14.6%減少した。前年同期比2期連続で新規融資が減った。