カムバック・セッションズ Vol.1
カムバック・セッションズ Vol.1

幻のリハーサルと奇跡の復活第一声
Comeback Sessions Vol.1 (So What)

 マイルスは1975年から81年まで引退していたが、完全に音楽活動を封印していたかといえばさにあらず、気が向けばスタジオに入って本番ともリハーサルとも試運転ともつかない演奏をくり広げていた。今日、それらの貴重な記録はソー・ホワット・レーベルによって開封されつつあるが、ここにまた1枚、78年3月に行なわれた幻のリハーサル音源がその全貌を現した。なおマイルスはオルガンを弾いたとの説もあるが、この日はテオ・マセロ(プロデューサー)やエンジニアといっしょにコントロール・ルームから見守り、実際にスタジオに入ったのはセッション終了後、全員で記念写真を撮るときだけだった(ジャケットに使用されているのが、その写真)。またキーボードに関して"パウリス(Paulis)"としている資料もあるが、パヴリスが正しい。ちなみにパヴリスはその後、ブッチ・テイラー&ペネトレイターズなるグループに参加、テイラーとの双頭アルバムも発表している。

 というわけでマイルスがどこまで関与していたのか、いや、そもそもマイルスのセッションだったのかどうかさえ疑わしいが、TMスティーヴンスによれば、セッション直前にコリエル宅で2日間にわたってリハーサルを積み、そこにもマイルスが姿をみせていたというから、演奏には加わらなかったものの、しかもリハーサルに毛が生えた程度のものだったとはいえ、リーダーはやはりマイルスだったのだろう。ただし、このセッションをもって「オレはマイルスと共演した」と豪語するのはいかがなものか。つまりはマイルスの刻印が押されるはるか以前の音合わせでしかなく、共演もなにも。よって聴き手も過度な期待は禁物。ここはひとつ、幻の音源が世に出たという事実に対して拍手を送るとしよう。

 演奏は、アル・フォスターが叩き出すタイトなリズムに乗ってコリエルがエレキをかき鳴らし、その周囲でパヴリスや菊地が埋め立て作業に精を出すといった感じ。トラック・ナンバーとしては6曲分打たれているが、トータルにして約35分、この種のセッションにつきものの会話らしき会話もなく、同じモチーフの演奏が何度かくり返される。テイク数は不明だが、すくなくとも8テイクは重ねられた模様。マイルスが吹くという意味では7曲目、81年6月「ヴィレッジ・ヴァンガード」出演中のメル・ルイス・ビッグ・バンドに飛び入り、トランペッターの楽器を片っ端から手に吹きまくるマイルスがすばらしい。なんと、あの音色もサウンドも健在ではないか。ちなみにこの飛び入りライヴこそ、マイルスが公衆の面前で放った奇跡の復活第一声。音質の向上ぶりもうれしい。

【収録曲一覧】
1-6.Untitled Tune
7.Untitled Blues (aka The Second Race)

1-6:Miles Davis (cond) Larry Coryell (elg) Masabumi Kikuchi (key) George Pavlis (key) T.M. Stevens (elb) Al Foster (ds) 1978/3/2 (NY)

7:Davis (tp) Mel Lewis (ds) with his Big Band 1981/6 date unknown (NY)