
伝説のレインボウ・シアター、再訪
Rainbow Revisited '73 (So What)
会場がレインボウ・シアター(ロンドン)と聞いただけで胸の高鳴りを覚えるのは、そう、いうまでもない、上下2枚の『アット・レインボウ・シアター』が圧倒的だったからだ(マイルスを聴けV7:P442)。
そのレインボウにおけるライヴが、またしても名門ソー・ホワット・レーベルから登場、しかも既発盤同様、当のミュージシャンによる自主録音(通称バンド・レコーディング)とあっては、これはもう耳タコの、しかしアサヒコムにおいては初登場の「ク~ッたまらん!」を思わず発射したくなるではありませんか。
ちなみに既発2枚は1973年7月10日のライヴ、本盤は11月19日、したがって"リヴィジテッド(再訪)"ということになるが、73年のレインボウ・シアターといえば、1月にピート・タウンゼント(ザ・フー)の呼びかけによってエリック・クラプトンの復活・激励コンサートが行なわれたことでも知られる。ギターの神様の復活にジャズの帝王の降臨と、うーん、やっぱりニッポンとはなにからなにまでちがいすぎます。
さて肝心の内容だが、別記データにあるように、全7曲が1枚のCDに収録されているものの、そのうち数曲は不完全版となっている。たとえば途中からの収録だったりフェイドアウトだったり。その意味では「なんだかなあ」とやや落胆、結果的に73年レインボウは再訪でなく初訪問ライヴの2枚で十分かとも思うが、ちょっとでも聴けばイチコロ、これまた「もっともっと、ウイ・ウォント・マイルス!」と前のめり必至のライヴ。
完全・不完全一切合切まとめて面倒みましょうのCD1枚、ドカンと60分一本勝負のオープニングは、おなじみ《ターンアラウンドフレーズ》、エムトゥーメのソロから突入。たしかにバンド・レコーディング、ステージの上で録音していたことがよくわかる。楽器によって鮮明度は異なるが、意外やピート・コージーのギターがいちばんよく聞こえる。逆にモッコリとモコミチ状態なのがマイケル・ヘンダーソンのヘヴィーなベースとアル・フォスターのバシャバシャ・ドラムスだが、これはしかたないだろう。それよりなによりマイルスが支障なく聞こえるのがうれしい。デイヴ・リーブマンのサックスも鬼の形相で鮮度は一番搾り。加えてマイルスとリーブマンの背後におけるコージーの細やかな動きまで鮮明にわかるボーナス・トラック付きときては、ク~ッ。他の演奏についてもほぼ同様の展開、よってレインボウで生まれた3枚、マイルス者ならすべて揃えたいところだが、あくまでも最初に聴くべきは既発の2枚、まずはそこからぶっ飛んでほしい。
【収録曲一覧】
1.Turnaroundphrase (incomplete)
2.Tune In 5 (incomplete)
3.Ife
4.Calypso Frelimo (incomplete)
5.For Dave (incomplete)
6.Right Off
7.Prelude
Miles Davis (tp, org) Dave Liebman (ss, ts, fl) Pete Cosey (elg, per) Reggie Lucas (elg) Michael Henderson (elb) Al Foster (ds) Mtume (per)
1973/11/19 (London)