「音楽が大好きなので、気になる新譜が多すぎてもう追いつけなくて。そこで1回、半年でいいから、世界中のミュージシャンが新作をリリースするのやめてくれないかなと思ったんです(笑)。まさに『ノーモアミュージック』」

 作り手の思い、そしてリスナーとしての観点、ふたつの目線の混在が、今回のタイトルになったとか。

 表題曲の「NO MORE MUSIC」では、そんなショウの切実な思いを歌っている。英語詞が簡潔で明快だ。それは今の時代を物語ると同時に、時代との接点を模索し、等身大での表現を試みた本作での姿勢を明示する曲でもある。

 ショウは回顧的な要素を織り込んだ「90'S TOKYO BOYS」、手前勝手な恋人の振る舞いを嘆く「BEDROOM」、ひとりで過ごすクリスマスイヴを描いた「NEKO」などで、自身の焦燥や葛藤を率直に表現。ブルースのエッセンスである憂鬱な感情、切なさ、やるせなさがくみ取れる。

 ショウが生まれ、幼少期を過ごしたニューヨークでの思い出、いじめ体験などを英語で歌う「Cold Summer」では、レイジがヒップ・ホップの要素を盛り込んだトラックを配し、コウキのグランジ的なギターが絡んでヒップ・ホップとロックの共存を具現化している。新たな持ち味を発揮したハイライト作として挙げられる。

 コウキは随所で骨太なギターを披露する一方、「WENDY」「時差」などポップな作品も手がけている。「WENDY」は山下達郎作品を思わせ、「時差」はAORやソフト・ロック的。コウキの音楽的な背景の幅広さがうかがえる。

 ハマはグイノリのファンク・スタイルだけでなく、ポップな作品でも手腕を発揮。60年代にヒットを量産したスタジオ・ミュージシャンによるレッキング・クルーの探究の跡を物語る。やっぱりOKAMOTO’Sはマニアックだ。

 本作では、メンバーそれぞれが新たな音楽的要素を持ち寄り、これまで以上に4人の個性を明確にしながら、バンド・サウンドを形成している。初回限定盤には、綿密な音づくりに取り組む様子を収めたドキュメンタリーDVDが付属。アナログ盤では、A面がロック/ファンク・サイド、B面がポップ・サイドと二分され、彼らの音楽姿勢を明確に伝えている。

 メジャー・デビューから7年。前傾姿勢で突っ走ってきたOKAMOTO’Sに、自分たちを客観視するゆとりが出てきた。『NO MORE MUSIC』は、大人になった彼らが幅広い音楽性とともに新たな一歩を踏み出した意欲作だ。(音楽評論家・小倉エージ)

●初回限定盤=DVD付き(アリオラジャパン BVCL-820~821)
●通常盤(同 BVCL-822)
●完全生産限定12インチ アナログ盤(同 BVJL-26)

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