海外作品にも多く出演し、活躍を続ける俳優・永瀬正敏。23歳のときジム・ジャームッシュ監督の映画「ミステリー・トレイン」に出演したことが、キャリアを大きく飛躍させた。映画「パターソン」(8月26日公開)で27年ぶりにジャームッシュ監督とタッグを組んだ。
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「実際に会ったのは10年ぶりかな。でも、ジャームッシュとはずっと連絡を取り合っていました。今回は『君を思い浮かべて役を書いたから、出てもらえないか』と言われて『喜んで!』と」
映画は米ニュージャージー州のパターソン市に暮らす“パターソン”という名のバス運転手の日常を描く。永瀬が演じるのは日本から来た詩人だ。映画の大事なシーンに登場し、主人公にさりげなく、そっと大事なものを渡す。
「僕の撮影は1日だけだったんですが、帰りたくなくなっちゃったんですよ。困ったことにジャームッシュ組の現場はいつもそう。『きっといい映画になる』という匂いがあって、あったかい雰囲気に包まれていて居心地がいいんです」
世界の映画人からリスペクトされているジャームッシュ監督。永瀬より一回り年上だが、感性や趣味など、どこか印象がダブる。
「似てますか? 光栄です。音楽や写真、アートが好きで、有名無名にかかわらずいいものを探しているようなところは共通点かな。生き方がカッコよくて、会うと刺激を受けます」
永瀬のデビューは16歳。俳優人生は34年になる。
「最近やっと役者という仕事の本質に半歩くらい近づけたかな、と思うようになりました。若いころは自分のことしか見えないし、自分のことで精いっぱい。そういう時期は必要なんだけど、最近は少し引いて総合芸術としての“映画”全体を見られるようになってきたかなと」
映画に出られなかった時期もあったと振り返る。