夏の甲子園大会は8月23日に幕を閉じた。今大会、観ていてもっともわくわくさせられたのは、準決勝まで進出した東海大菅生(西東京)の「1番・ショート」、田中幹也だった。身長166センチ、体重61キロと小柄な田中は、とにかく俊敏。若林弘泰監督は、敬意を込めて「僕はいつもサルって呼んでるんですけどね」と笑う。
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打った後、足を高速回転させ、グラウンドを駆け巡る姿を見ているだけでも楽しかった。最大の見せ場は守備。三遊間の深いところで捕球し、すぐさまジャンピングスローをしたかと思えば、横っ跳びしながら信じられないような素早さで立ち上がり大遠投をし……。何度も度肝を抜かれた。
同じ1番打者として注目を集めたのは、前橋育英のセンター・丸山和郁だ。ニックネームは「野生児」。わずか3試合で、大会タイ記録となる8盗塁を決めた。しかも成功率は100パーセント。
丸山は投手でもあった。「行けるところで行かないと、いつ行くんだという話なので」と、緊急リリーフ、先発にと、あらゆる場面で、臆することなく腕を振った。丸山が登板するとき、キャッチャーは丸山が好きな黄色いミットに変えるのが恒例だった。
2回戦で前橋育英に敗れた明徳義塾の馬淵史郎監督は、丸山をこう絶賛した。
「将来、野球で飯が食えるかもしらんで」
今大会、スラッガーとして広陵の中村奨成が注目を集めたが、もう1人挙げるとしたら明豊の「3番・レフト」を任されていた浜田太貴だ。2年生ゆえ背番号は17だったが、風格は完全に上級生。3試合を戦い、2本塁打を含む15打数9安打と打ちまくった。川崎洵平監督は、こうたたえる。
「つかみどころのないやつなんですけど、物おじしないし、こういう舞台でやるのは浜田だと思っていた」
積極的なイメージが強いが、3回戦の神村学園戦では延長12回裏、満塁から冷静にサヨナラとなる押し出し四球を選んだ。
(ノンフィクションライター・中村計)
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