中国が北朝鮮への国連安全保障理事会の制裁決議を受け入れた。ジャーナリストの田原総一朗氏がその理由を明かす。
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北朝鮮が7月4日と28日にICBM(大陸間弾道ミサイル)を連続発射したことを受け、国連安全保障理事会が8月5日、北朝鮮の主産品である石炭や海産物などの輸出を全面的に禁止する制裁決議を全会一致で採択した。決議が履行されれば、北朝鮮の年間輸出総額の3分の1にあたる10億ドル(約1100億円)が削減されることになるようだ。米国のヘイリー国連大使は、「北朝鮮に対する過去最大の経済制裁だ」と強調している。
北朝鮮に対する主な国連制裁は2006年に最初の核実験が行われたときから8回目だ。過去の制裁決議では輸出量や額に上限を設けたり、輸出目的で例外を認めたりしていたが、今回はそうした留保規定がなくなった。さらに、北朝鮮が海外に派遣している労働者についても加盟国に新規の受け入れを禁じた。
それにしても、北朝鮮との対話を主張し制裁強化に消極的だった中国とロシアが、なぜ、最終的に同意したのか。とくに中国は、北朝鮮の貿易額の約9割を占めていて、その中国が密輸取り締まりを含め、安保理決議を厳格に履行すれば、北朝鮮は致命的ダメージを受けることになる。
トランプ大統領は選挙中や当選直後には、中国が為替操作をしており、不当な輸出により米国に巨大な貿易赤字を強いている、その不当性を徹底的に糾明すると強調していた。だが、4月の習近平国家主席との会談以後、中国による北朝鮮への圧力に期待をかけ、中国批判をしなくなった。米中関係の密度が濃くなり、アジアにおける日本の存在感が希薄になる。そのことを安倍晋三首相が心配して二階俊博幹事長を中国に派遣し、習主席と会談させたのであった。
だが、中国は北朝鮮に圧力をかけるどころか、今年になって北朝鮮との貿易量を増やしていることが明らかになった。そこで、米国は中国に対し、経済制裁をかけるという姿勢を強めた。あるいは、中国はそのことに危機感を抱いて、安保理決議に合意したのであろうか。