小若さんらは、市販の弁当や外食、加工食品のミネラル量を調べると、厚生労働省が定めた推奨量をはるかに下回っていた。理由として考えられるのが、加工食品の製造で行われている“ブランチング”だ。
「野菜や肉などを軽く加熱する工程のことで、殺菌や、アクを取り除く、色をよくするなどの目的で行われます。ブランチング後に食材を冷凍し、解凍して洗うため、ほとんどのミネラルは流れてしまう。亜鉛はごくわずかしか残りません」(小若さん)
亜鉛は、体内で作られないため、不足したら食べ物で補うしかない。小若さんが「いつもの食事に“プラスアルファ”して」とアドバイスするのが、「大きめ(10センチほど)の煮干し2匹」か「煮干しやアゴ(トビウオ)の粉末を大さじ2杯」を毎食とるという方法だ。
「粉末は非精製のゴマ油やオリーブオイルなどと混ぜてペースト状にするといいでしょう。元はだしなので、料理の味がよくなります。夏なら冷しゃぶのタレ、そうめんや冷や奴にかけてもいいでしょう」(同)
このほかにも、亜鉛が多く含まれるカキなどの貝類を、意識してとるようにしたい。
こうした食事の改善を試みても症状が改善しない場合は、医療機関の受診を。服用している薬の影響なども考えられるためだ。
「脂質異常症や骨粗しょう症、認知症の薬のなかには、亜鉛欠乏を招くものが少なくありません」(倉澤さん)
強い皮膚のかゆみを訴えた80代の患者に、それらの薬をやめてもらい、亜鉛製剤を処方したところ、症状は改善したという。
「亜鉛欠乏は個人差が大きく、同じ量でも症状が出る人と出ない人がいます。まだ症状がない人も健診などで血液検査をする際に、亜鉛の量を測っておくといいと思います」(同)
■亜鉛の豊富な食品(mg)
カキ(貝)/中3個/6.6
鶏レバー/6切れ/2.3
十割そば/1食分/1.9
牛乳/200ml/0.8
クルミ/9粒/0.7
アーモンド/19粒/0.6
煮干し粉/大さじ1/0.5
(「食品と暮らしの安全」をもとに編集部で作成)
※週刊朝日 2017年7月28日号