ヒアリの特徴(働きアリ)(週刊朝日 2017年7月21日号より)
ヒアリの特徴(働きアリ)(週刊朝日 2017年7月21日号より)
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 南米原産で、強い毒を持つ外来種「ヒアリ」。5月下旬に神戸港で陸揚げされ、兵庫県尼崎市に運ばれたコンテナで初めて確認された。7月3日には東京港でも発見されるなど、各地で騒ぎとなっている。

「殺人アリ」とも呼ばれ恐れられているが、実は毒で死ぬことはまれだ。環境省外来生物対策室によると「すでにヒアリが定着している台湾では、死者は確認されていない」という。だが、油断はできない。刺されると、重度のアレルギー反応である「アナフィラキシーショック」が全体の1~3%程度で起きる可能性がある。動悸(どうき)や倦怠感(けんたいかん)などの全身症状が出た場合は、早めに病院で治療を受ける必要がある。

 重症にならなくても、腹の毒針で刺されると激しく痛む。漢字では「火蟻」とされるように、痛みに加えて水ぶくれができて、ヤケドのような症状になるのが特徴だ。

 それだけではない。真の恐ろしさは電気設備などを壊して、経済的な損害も与えることだ。ヒアリの生態に詳しい琉球大学の辻和希教授は言う。

「ヒアリは通信ケーブルや電気設備を破壊する習性があり、全米で714億円ほどの被害が出ています」

 油が好物であるため、電気ケーブルなどに塗られている油分に集団で集まってくるのではないかと言われている。

 巣(コロニー)のアリ塚も脅威だ。草地などの開けた土地に、直径数十センチのドーム状のアリ塚を作る。ここに誤って足を踏み入れると悲惨だ。アリ塚を壊されたときのヒアリは最も攻撃的で、全身に襲いかかってくる。

「公園や河川敷、庭の芝生などにもアリ塚を作る。河川敷や芝生にできれば、羽のないハチが大量に地面にいるようなもの。人が安心して座ることはできません」(辻教授)

 夏場の河川敷では花火大会などのイベントが多いが、アリ塚が発見されたところでは、開催は難しくなるだろう。

「侵入域が広がれば、日本の国土に大きな打撃を与える。水際作戦で拡散を封じ込めなければなりません」(同)

 1日に2千個の卵を産む能力がある女王アリも、すでに発見された。環境省の担当者は「日本に定着してしまう最悪のケースも想定しておかなければならない」という。ヒアリの恐怖はすぐそこまで来ている。

週刊朝日  2017年7月21日号