家電量販店のビックカメラが22日、日本を代表する電気街、東京・秋葉原に「ビックカメラAKIBA」を完成させた。秋葉原にはライバルのヤマダ電機やヨドバシカメラは大型店を構えていたが、ビックカメラとしては初出店だ。
大手3社の店が出そろったことで、家電の安売り競争が激しくなりそうなものだが、そうとも言い切れない事情がある。ビックカメラが狙うのは、利幅の小さい家電販売よりも、外国人観光客やファミリー層を取り込むことにあるからだ。
ビックカメラは1978年の創業で、首都圏を中心に大型店を運営している。2006年にはパソコン販売のソフマップを子会社にしていて、今回のAKIBA店は、ソフマップの秋葉原本館を改装したものだ。パソコン販売が伸び悩むソフマップから、知名度が高いビックカメラに転換することで、売り上げ増を図る。
売り場の特徴を見ると、ビックカメラの戦略がわかる。7階建てのフロアのうち1階ではくすりや日用品、お酒などを扱う。2階では化粧品や健康機器、トラベル用品など。これらは外国人観光客に人気のものだ。「羽田や成田で人気の土産菓子も1階で販売する。仮想通貨の『ビットコイン』も使えるようにして、外国人観光客らにアピールしていく」(同社広報)
ビットコインは中国や欧米で普及している。為替の手数料が抑えられるため、外国人観光客の利用が期待できそうだ。
ファミリー向けの商品も充実している。ベビー用品やおもちゃ、ランドセルまで幅広い。「専門店の集合体」として、自転車やゴルフ用品も取り扱う。
もちろんカメラやパソコン、テレビなども売っているが、家電販売がメインの池袋や有楽町などのほかの店舗とは大きく異なる。
秋葉原は世界的に知られ、外国人観光客が多い。歩行者天国もあり家族連れも訪れていて、こうした人たちを囲い込みたい考えだ。家電販売はヤマダ電機やヨドバシカメラに加え、通信販売大手のアマゾンとの競争もあり、もうかりにくくなっている。ビックカメラとしては、「脱家電」の新たな店舗のあり方を探る狙いもありそうだ。
一方で、ソフマップの秋葉原本館はゲームの販売などで「おたく」たちにも利用されてきた。ソフマップは秋葉原本館を含め秋葉原に7店あったものを5店に集約。サブカルチャーやパソコン、アップル製品、ゲーム、中古品といった専門店として、6月22日にリニューアルオープンした。
今後はビックカメラAKIBA店と連携し、「AKIBAビックマップ」として、合同キャンペーンやイベントを開催していくという。
家電の街からおたくの街に変わったイメージがある秋葉原だが、ビックカメラの進出でさらなる変化が期待できるかもしれない。(本誌・多田敏男)
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