自己効力感を下げる考え方には、「自責」「希望的観測」「回避」などがある (※写真はイメージ)
自己効力感を下げる考え方には、「自責」「希望的観測」「回避」などがある (※写真はイメージ)
この記事の写真をすべて見る

 自己効力感とは、平たくいうと「自分にはできる」という確信のこと。具体的には、「ある結果を手に入れるための行動を、どれだけ適切に達成できるか見通せる力」を指し、スタンフォード大学の心理学者バンデューラによって1970年代に提唱された概念だ。これが高い人は、仕事に限らず何事においても積極的で、うまく立ち振る舞うことができると言われている。

 働く人のメンタルヘルスに詳しい筑波大学大学院人間総合科学研究科教授の水上勝義さんは、「自己効力感が低い人の考え方には共通の傾向がある」と話す。だが、その長年の考え方のクセを意識的に変えるトレーニングを続けることで、自然と自己効力感が高い、ポジティブな考え方ができるようになるそうだ。

 自己効力感を下げる考え方には、「自責(何でも自分のせいだ、自分はダメな人間だと思い込む)」「希望的観測(現実を見ないでこれは夢であってほしい、誰かが助けてくれるはずと現実逃避する)」「回避(ストレス食いをする、人にあたるなど、問題を直視せず目を背ける)」などがある。

 こうしたネガティブな考えが浮かんできたら、まずは「自分はこんな考え方をしてしまっている」と自覚すること。その上で、どこに問題があったのか、人に相談したり、解決法を調べたりするなど、問題を解決するために行動をとっていくとよいという。

「悩んでしまって先に進めないときは、気持ちが落ち着くのを待つのではなく、行動に移すことが大事です。行動に移すことで脳が刺激されて、前向きに考えられるようになるということもあります」(水上さん)

 自己効力感を高めるコミュニケーションの取り方もある。参考になるのは“アサーション”だ。「主張」という英語で、心理学では「正しい自己主張」という意味で使われている。

 一般的に我々が誰かとコミュニケーションをとるとき、大きく三つのタイプに分かれるとされている。それは、「自分を優先させるタイプ」「相手に合わせるタイプ」「自分と相手のバランスを考えるタイプ(アサーション)」だ。自己効力感を高めるためには、三つめのタイプのようなコミュニケーションをとることが大事だ。

次のページ